【災厄の王 第二章】
闇の溢る世界へと降り立った我々は、例に漏れず、二手に分かれて下層を目指すこととなった。
ザラ 「こちらは右ルート行きます!」
皆に呼びかけ、駆け出す。
どうでもいいけどおれ、毎回「右」に行ってるなぁ;
今度行くときは左ルートも通ってみよう。そう思った。
第一PTの勇者たち、とりわけ、【まつかぜ氏】と【おさむ氏】の二人は、今日顔を合わせてからずっと、お互いの、かつぜつの悪さを指摘し合いながら、じゃれあっている。
いや、今に始まったことでは無かった。
おれは今まで、幾度もお二人が一緒にいるところに立ち会っているが、毎回この掛け合いは、微妙に進化しながら続いている。
お二人は、あらゆる言語を【噛む】ことから、
今では、多くの冒険者たちから親しみを込めて【噛み様】と呼ばれている。
そして、その二人の【噛み々】に、表情一つ変えず的確にツッコミを入れ、いなし、時にはスルーし、仕舞いには、通訳までこなすクールガイ【いち氏】。
この三人、トリオ漫才として、演芸GPに参加すれば、ぶっちぎり優勝するのではないか、と、おれは思った。
こちらサイドのメンバーは、彼らの紡ぐ言葉の螺旋に、ただただ圧倒されるのみ。
噛み々と、多少の面識を持つ、おれと【ほむさん】だけが、少しだけついていける程度だった。
一方、向こうPTの【ワカ女氏】は、
もはや彼らのやりとりは慣れっこの様子で、ニコニコしながらその様子を見守っていた。
彼らは、楽しそうにくっちゃべりつつも、ものすごい速度で魔物たちを粉砕してゆく。
こちらも、腕に覚えのあるメンバーを揃えたつもりではあるのだが、
さしもの【勇者おさむ一味】には、ただ存在が霞むばかり。
我らがザラ隊長(存在感50/100)は、思った。
解っていたことではあるが、
格が違う、とはこのことかー・・・と。
ただ、途中、浮かれすぎたおさむ氏が、戦闘後の回復を待たずに
【キングリザード】に突進し、返り討ちにあうというハプニングはあった(油断しすぎw)。
ー・・・程なくして、我々は、最奥までたどり着く。
おれ達【第二PT】の面々は、ゴクリと唾を飲んだ。
これだけ豪華な面子が、助太刀に来てくれたのだから、
今回ばかりは負けるわけにはいかない。
遊び半分で行っていた、過去三回とは根本的にわけが違うのだ。
仲間達と目で合図を交わし、頷きあう。
その間も、彼らの愉快なやりとりは、エンドレスに続いていた。
だがー・・・
おっちょこちょいを自負しながらも、
眼鏡の奥の優しげな瞳に、聡明な光が宿る、おさむ氏。
そして、自ら進んで歌舞いて、場を盛り上げ、その熱き魂の詩で
周りの者の志気を高めてゆく、まつかぜ氏。
この二人の【勇者】は、われわれの緊張を解すために、わざと【噛み様】を演じているのではないか、と、そう思えてならない。
・・・うん、そう思いたい/(.^.)\
緊張感が無くてすいません、と、いち氏が謝罪するが、
このくらいの気構えの方が、かえってやりやすい。
最奥の扉の前に、集結したおれたち八人。
結局、大した作戦も立てられないまま、
時間に尻をたたかれて先へ進むこととなった。
我らがザラ隊長(存在感20/100)は、
静かに扉に手をかけた。
いよいよだ。
熱き戦いが今、幕を開ける!!!
~~~つづく~~~