レンダーシア大陸。
見渡す限りの砂と岩の大地に、
容赦の無い熱風が吹き抜ける。
照りつける太陽が灼ける砂に反射して、
高く高く…天を衝かんばかりにそびえ立つ
巨塔…『不思議な魔塔』を今日も照らす。
その塔の麓の大きなオアシスに、
ここ『アラハギーロ王国』は在った。
☆ ☆
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☆ ☆ ☆
灼熱のこの大地。
だが、空気が乾燥していることもあり、
一度日光の当たらぬ場所に行けば
意外なほどの気温差を感じたりもする。
例えば…今おれ達の居る、
街の片隅に構えられた この地下倉庫は、
かなり涼しかったり。
その涼しさを利用して、この国の特産品である
シャイニーメロンの
貯蔵などにも使われているようだ。
いやー、生活の知恵ってヤツだね。
『 …で?
その涼しげなメロン倉庫で…
☆ ☆ ☆
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☆ ☆ ☆
『 なんで僕達は
『惨劇』に見舞われようとしてんだ。
『 ……
…おれの名は『ザラターン』。
オーガのしがない冒険者。
『 おい鬼、聞いてんのか?
そして、おれを鬼と呼ぶ
この仏頂面のエルフ系魔族の名は
『ツキモリ』。
まあ、腐れ縁の旅の相棒ってやつだ。
『 …地下倉庫のメロンを運び出して
キャラバンに引き渡し、そのままその隊商を
『エテーネ王国』まで護衛。
そいつが今回のクエストのはずなんだが…!
…言い終わるが早いか、おれの頭上目掛けて、
鋼鉄製の『トゲ付きハンマー』が振り下ろされる!
慌てて跳び退くと、そのハンマーは
当然のように、おれの居た場所の床に、
轟音と共にヒビを入れた。
いやはや、涼しいなんてもんじゃ無いぞ、
この倉庫!
『 それはもう聞いた!
要は なんでその倉庫に…!
☆ ☆ ☆
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☆ ☆ ☆
『 こんな物騒な警備マシンが居て、
僕達に襲いかかって くんだって
聞いてんだよッ!!
『 さぁなあ…!
おれが聞きたいよッ!
ツキモリが、憤慨しながら機械兵に
火球の呪文を飛ばす。
放たれた火球を機械兵は、
ハンマーと逆の腕に装着した、
同じく鋼鉄製の剛剣で 事もなく両断した。
奴はそのまま、上半身を高速で
グルグル回転させながら
こちらに迫ってくる。
下がるツキモリと入れ替わりで
おれは前進し、守りの力を付与した盾で
攻撃を受け止めた。
そのまま腕に力を込め続ける。
『 それにコイツは…!
たぶん警備マシンじゃあ…無いッ!!
たしか、最新鋭の『お掃除マシン』…
【白式】だッ!!
理由は知らんが…!
なんか暴走してるようだなッ!つおおッ!!
盾をはめた腕を振り抜いて、
ようやく斬撃をいなす。
が、息つく暇も無く。
白式は次々と、多彩な攻撃を繰り出してきた。
おれ達は必死に応戦する。
『 は、はあ!?
お掃除マシンだッ!?!?
ヘタなジア・クトより強えじゃねーか!
なんでお掃除マシンに剣とハンマー着けるんだ! 馬鹿なのか?
アストルティアの奴は皆、馬鹿なのかッ!?
『 アラハギーロ王国の謎の技術力は、
かねてから冒険者達の間でも話題に…
『 知らねぇよ!
おい、なんか黄金の光を纏ってるぞ!
『 あれは…!
お掃除マシン白式、
【ハイパーモード】!!
『 だからなんで お掃除マシンに
ハイパーモードとか付けてんだよォォ!
馬鹿だろ!絶対馬鹿だろ!!
お掃除する対象間違ってんだろッ!!
『 あっ、お掃除って そういう…?
『 今更関心してんじゃねーよ!
『 まずい来るぞ!!
『『 ぎぃぃやあああッッ!! 』』
…かくして、砂漠の国のメロン倉庫に、
爆音と、野郎二人の絶叫が響き渡ったのだった。
☆ ☆
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☆ ☆ ☆
『 そ、それはお疲れ様だったね…!?
アラハギーロの街外れ。
ドタバタと ひと騒動終えた頃には、
日はどっぷりと暮れていた。
引き気味で 労いの言葉をくれた
このウェディの名は『エスタータ』。
彼女もまた、おれ達の旅の仲間。
吟遊詩人である彼女は、二人が地下で
バタバタしている間、路銀稼ぎがてら、
広場で興行に勤しんでいたようだ。
『 ったく…死を覚悟したぜ…
廃棄にしちまえ、あんなの。
『 でもでも、補償もろもろは頂けたんでしょ!
結果オーライじゃん?
割に合わねえ、と愚痴る魔族を尻目に、
おれは頷いた。
ま、冒険にトラブルはつきものだ。
皆無事だし、良しとしよう。
『 しっかし、砂漠の夜は冷えるな…
よし、なんか食いに行こうぜ。
『 おーいいねー♪
ファラフェルくいたい!
『 何だ、それ…?
~つづく~