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元騎士

ザラターン

[ザラターン]

キャラID
: ER367-139
種 族
: オーガ
性 別
: 男
職 業
: バトルマスター
レベル
: 133

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ザラターンの冒険日誌

2024-11-09 22:55:07.0 2024-11-10 11:51:23.0テーマ:その他

砂の記憶(8)(ver7.0までのネタバレ注意)

アレナから聞いた話の中で、おれは
このエテーネ王国に降りかかった
幾つもの悲劇の事と、

そして、つい最近まで この国には、
古来から国民達を導いていたという、
【 時の指針書 】と呼ばれたモノが存在していた、という事を知った。


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


時の指針書とは、国民一人に一冊、
漏れなく配られる白紙の本で、

一日ごとに、国王が祭事によって
『時見の箱』から得たという神託が、
自動的に、個人個人の持つ本に
刻まれるのだという。具体的には…


例えば、朝起きたら。

『今日のアナタは、何々をしなさい』

…的な感じで、その日、己の為すべき行動が、
勝手にその本に記されている感じらしい。


( …一見、
  華やかな国だと思ってたが…


そして…
定められた その行動指針に もし背けば。

『指針監督官』とかいう
王立の特務機関がやって来て、
厳しく取り締まられていた、と言うのだ。


( とんでもないディストピアじゃねぇか、
  エテーネ王国…!


『 やっぱり、おかしい…ですよね?
  私達は、生まれた時から
  そういう生活をしてたので…

『 あ、いや…!


半ば引き気味に話を聞いていたのを悟られたか、
アレナは少し悲しそうに笑う。
おれは、慌てて取り繕おうとしてみるが…


『 …そうだなあ。

  難しい事はわからんが、
  国としては、そういった管理の方が、
  上手く回しやすかった…のかもしれないな。

  それに…自分が何者なのか?とか…
  生きる意味?とか、そういうの。

  いちいち
  自分で考えて責任持たなくて良いってのは
  ある意味じゃあ楽なのかもしれないが。

『 自分が、何者か…

『 …まあ、おれのような身の上にゃ
  合わないってのも、間違いは ないかな。
  君らには悪いかもだが。


…どう考えても、本音の方が漏れ出てしまう。

実際この国で生まれ育った人間なら、
また違った考えが持てるのかもしれないが…

少々バツが悪くなって、アレナから目をそらす。
彼女は少しうつむいて、何かを
考えているようだった。


『 私が錬金術師になったのも、
  指針書の導きに
  ただひたすらに従って生きてきた結果、
  なんです…

  私自身は、
  錬金術を好きになれたから
  別に それでも良かったのだけど…

  でも、もし指針書が無かったら。
  私は、どうなってたんだろう?
  ちゃんと『何者か』に、なれてたのかな…
  
  指針書の失われた この街で…
  私はこれから、
  どう生きていったらいいんだろう?


うつむいたまま呟くアレナを見て、
ようやく おれは、彼女が時折見せていた、
少し寂しそうな笑顔の意味が、分かった気がした。

彼女の場合は どうあれ、
きっと律儀に指針書に従って生きたって、
国民全員の幸せが
約束されていたってワケでも無いのだろう。


( だったら…答なんて決まってるだろ!

『 アレナ。


☆   ☆   ☆   ☆   ☆


『 前言撤回だ。
  やっぱ無くなって
  心底、良かったと思うぜ おれは。
  その指針書ってヤツ。

『 えっ…


おれは大仰に両手を広げて笑ってみせた。


『 指針書が あろうがなかろうが…!
  人間ってやつァ、生きてる限り
  結局、何かで悩むし、迷うんだ!

  うむ、断言する。そういうもんさ。

  じゃあ、手前の意志で悩んでた方が、
  絶対お得だって!

『 ザラターンさん…?


変な言い回しに首を傾げる錬金術師には構わず、
おれは力説した。


『 とにかく!
  君を縛るもんは もう何も無い!

  これからだって
  君さえ望めば…

  きっと何者にだってなれる。
  どこまでだって、行ける。


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


『 いっそ、思い切って
  外の世界に飛び出してみるってのも
  面白いかもな!

『 外の…世界…

『 ああ。さっきのツボ錬金みたいに、
  きっと君の琴線に触れる物が
  星の数ほどあるぞ。

  オーグリードの乾いた空に…
  ウェナのエメラルドグリーンの海!
  プクランドなんて…建物が
  お菓子の見た目だったりするんだぜ?


『 お、お菓子の家…ッ!?


『 おう、壁が板チョコ風だったり…
  あ、あと関係ないけど、
  でっかいホルンに乗って、月まで飛ぶんだ!

『 え、えええっ!?


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


『 た、確かに…指針だけを追ってたら、
  一生、見る事のないモノばかり、
  なのかも…


アレナの真黒な瞳に、
ようやく一条の光が灯ったような気がした。


~つづく~
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