『 あれ?キミ…
キミって、普通の人より
創生のチカラが、強い…?
なんでだろ?
パステルカラーの長衣に若草柄のケープをまとった
赤毛の少女は、ぼんやりとクーを見つめるなり
意味深にそう呟いた。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 えっ…?
その呟きに、困惑気味に首を傾げるクー。
『 あ!
あはは…
急にこんなこと言われても
よくわかんないよねー!
ごめん、気にしないで!
その顔を見て、はっと我に帰ったか。
少女は取り繕うように笑いながら、
そそくさと その場を去ろうとしたのだがー…
『 いいや、おおいに気になるな。
『 へっ!?
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 いや、すまない。
盗み聞きする気はなかったんだが…
『 やぁやぁクーくん、
パーリィ会場でナンパとは、
キミもスミに置けないねぇ♪
『 ふん、アホくっさ…
『 えっ…みんな!?
…クーが何者かを知るなんらかの手掛かりに
なるかもしれない、と、おれ達は急遽、
少女を引き止めることにしたのだった。
事情を飲み込めず、目を丸くする少年少女。
☆ ☆ ☆
…おれ達はひとまず、
軽く互いの自己紹介を済ませた。
赤毛の少女は『ポルテ』と名乗った。
聞けば燈火の調査隊の中でも、
あのエックスさんをはじめとする凄腕達と
肩を並べる、主要メンバーの一人なのだという。
『 へえ!その歳で大したもんだ!
『 えへへー、そうかな?
まあでも…ホントにすごいのは、
あたしじゃなくて『師匠』なんだけどね。
賞賛の言葉に、ポルテは照れたような、
どこかバツの悪いような笑顔で頭を掻いた。
なるほど、そういう事だったか。
『 そっか、じゃポルテは さしずめ
『魔法使いの弟子』ってとこかな?
なんか詩の題材にできそうな響き!
『 魔法使いの弟子、かあ。
うーん、まあそんなとこ…かなぁ。
インスピレーションを得て目を輝かせる
吟遊詩人の言葉に、軽く思案したあと、
ポルテは歯切れ悪そうに唸った。
何やらちょっと複雑な事情がありそうだがー…
そこに深入りする前に、今度は彼女の方から
質問が飛んできたのだった。
『 ザラたん達も調査隊の人なんだ?
『 ザラたん…まぁ…いいか。
最近ドゥラ院長に雇われてね。
調査隊をバックアップする裏方仕事とでも
思ってくれればいい。
『 そっかぁ、よろしくね!
ザラたん、つっきー、エスタ、
クー!
『『『 よろしく! 』』』
((( つっきー… )))
『 ンだよ…!
☆ ☆ ☆
『 …てなわけで、クーは記憶喪失みたいでな。
少しでも手掛かりが欲しいとこなんだが…
ポルテ、君はさっきクーを見て
『創生のチカラが強い』?
とか言ってたよな?
それって、記憶喪失となんか関係あったり
しないか?
あれだ、身体の異常が『気』の乱れに
繋がってる、とか…そういうの?
ダメ元で聞いてみるも、
ポルテは申し訳無さそうに首を振った。
『 …ごめん。
あたしに読み取れるのは、
創生のチカラの強さだけなんだ。
もしかしたら師匠なら何かわかるかも
しれないけどー…呼び掛けても反応がなくて。
『 いやいや、悪い。無茶振りだったな。
じゃあもし良かったら…
こんど師匠に会った時に、それとなーく
聞いておいてもらえないかな?
『 う、うん…!わかった。
…『呼び掛けても反応が無い』?
魔法的な通話手段でも持っているのだろうか。
門外漢すぎてよく分からんが、いやはや。
魔導というものは奥が深い。
ま、いいか。
『 ありがたい、よろしく頼むよ。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
かくしてポルテとの会話も終わり、
それぞれが宴へと戻っていった。
ツキモリは珍しい料理の数々に心奪われたか、
狼狽えるクーを引っ張り回しながら、
目を爛々とさせてテーブルをハシゴする。
エスタータは街の人に一曲せがまれ、
張り切りながら広場の中央へと向かったようだ。
…心地良い竪琴の音色が、
夜の街に響き始めたのを見届けてから、
おれは腹ごなしがてら、街外れの泉のほとりを
散歩する事にしたのだった。
街の熱気と喧騒で ほてった身、そして調子に乗ってご馳走を詰め込みすぎたこの腹を、
泉に吹く夜風と虫の声が優しく迎え入れてくれた。
一人、情報を整理するには丁度いい場所だ。
そう考えていたのだがー…
その静寂は、
突如として破られる事になるのだった。
~つづく~