続きです。
なんやかんやあってMBRに出場可能なモンスターが2体となってしまった我が魔軍。
なんとか状況を打破するため、ある雨降りの夜、
暫定リーダー・たけやりへいの発案で新規メンバーオーディションが行われました。
アラハギーロの某所で行われたオーディションの風景です。
フレンド同士やチームで参加してくれたモンスターも多く、大変賑わいました。
そんな彼らはやる気満々。
誰が新メンバーに選ばれてもおかしくありませんでしたが、
ひとり、異様な雰囲気を放つモンスターがいました。
彼は志望動機などを尋ねられてもいっさい答えません。
その瞳を妖しく光らせ、黙ってその場にいました。
常識的に考えれば選考から漏れてしまいます。
しかし、たけやりへいはどうしても彼のことが気になりました。
――只者ではない。
そんな直感に、たけやりへいは賭けてみることにしました。
受け答えしない新人・やみしばり
彼の名前はヤッチューといいます。
スライムナイトに代わるアタッカーを求めていたたけやりへいは、
彼の持つ斧に可能性を感じました。
しかしまだまだ未熟だったやみしばりは研修生として、
我が魔軍に預かり所属となりました。
ひとまず王家の迷宮行きを命じられます。
修行は1月もの間続きました。
厳しい戦いの中で『呪縛』や『晴天魔斬』といった特技を身に付けていった彼は
教官アンルシアからも「そこそこ役に立つやんけ」という評価を得ることができました。
無事カンストを達成し、ちから+のパッシブとバッジでムキムキになった彼はいよいよ準備万端。
たけやりへいの期待も最高潮へ達していました。
ようやくMBR復帰。
このまま一気にランクAまで上り詰めよう!
意気揚々と舞台への扉を開きました。
しかし、
彼らはそれまでに味わったことのないような苦戦を強いられたのです。
期待のルーキー。
いざ舞台へ上がるとパッとしません。
範囲攻撃である『呪縛』はメイン火力としては乏しいのです。
追加効果の麻痺はあまり入らないのですが連続使用します。
一心不乱に戦闘を長引かせているようにしか見えないのです。
単体高火力を期待されていた『晴天魔斬』も予想よりダメージが出ません。
その上モーションが長いので、サポート仲間のモンスターに美味しいところを持っていかれます。
「おい、おまえさん、もうちょっとなんとかならんのかい」
たまらず口を出したたけやりへい。
しかし、返事はありません。
その沈黙が、蝕むように、場の空気を異様なものに変えていきます。
瞳は妖しく光り続けています。
――そういや、こいつの声聞いたことないな……。
たけやりへいは今更になって、
そんなことを思いました。
ただそこに在り、
そこに浮き、そして揺れている。
それがやみしばりです。
だから、
たけやりへいは、
やみしばりを、
解雇しました。
再び未来が闇に閉ざされた我が魔軍。
Aランクに上がれるのはいつになるのか。
最後にレギュラーの栄冠を勝ち取るのは誰だ!