3月ほど前、
本当の強さを知るためにスライムナイトは我が魔軍を離れて武者修行という名の自分探しへ行きました。
オルフェア東で出会った同胞たちと剣の修行を始めたのです。
しかし、3日程すると空腹に耐え切れず、新人冒険者を襲う山賊へと転職しました。
アウトローとしての生活が日常化し始めた頃、不意に訪れた強い冒険者に同胞たちは皆やられてしまいました。
命からがらドワチャッカ大陸へと逃れたスライムナイトはオアシスでサンドフルーツを拾いながらひっそりと暮らすようになりました。
ある砂嵐の吹き荒れる日、スライムナイトは道に迷い、オアシスから遠く離れた場所まで来てしまいました。
そこで彼は後の盟友となる魔物と決闘をすることになります。
自分より二回りも大きな体を持つゴーレムの姿を見た時、
スライムナイトの中でくすぶっていた強き者へ憧れる想いが、
再び燃え上がりました。
気が付くと彼はゴーレムに襲い掛かっていました。
山賊時代の経験から卑怯さスキル140まで成長していた彼のスラ・スラッシュがゴーレムの背中に痛恨の一撃を与えます。
突然の襲撃に戸惑いながらも、応戦するゴーレム。
「ナゼ コウゲキ スル」
当然の疑問が口を突いて出ます。
しかし、スライムナイトは黙って攻撃を続けます。
――言葉は不要、ただ、力と力のぶつかる先に俺の捜し求める何かがある!
そんな強い意志で残鉄丸を振るうスライムナイト。
不意打ちを受けた側は堪ったものではありません。
一進一退の攻防は、
夜のとばりが下りても決着がつきませんでした。
闇に染まっていた空の色が変わる頃になって、ようやくスライムナイトが口を開きます。
「ちょっと、休憩しよう」
勝手なこと言いやがって、とゴーレムは思いましたが、疲れていたので休むことにしました。
岩陰に持たれかかるとそれまで黙っていたスライムナイトは、これまでのことを語り始めました。
モンスターバトルロードでいかに活躍していたのかを嬉々として話したかと思うと、新しいメンバーが入ってからの自分の立場を嘆きました。
ゴーレムには何故、襲撃者の身の上話を聞く羽目になっているのかがサッパリわかりませんでした。
適当に相槌を打っている間も、スライムナイトは話し続けます。
「やっぱりバトルロードで活躍するしかないのであろうか」
「ソウダナ」
「でも、一人じゃ参加できぬのだ」
「ソウダナ」
「……よかったら、俺と一緒にバトルロードに参加しないか。お前は硬くてデカいから、弾除けくらいにはなるだろう」
「ソウダナ」
「おお! では、早速モンスター酒場を襲撃しよう! まずは参加権を奪うんだ!」
「ソウダナ」
ふと、我に返るとゴーレムはガタラの酒場の前にいました。
どうやら疲れておやすみチャージをしている間に輸送されたようです。
隣にはスライムナイトとやみしばりがいました。
事情を聞くと、やみしばりは一度はバトルロードに参加したものの、リーダーのたけやりへいの不興を買い、解雇されしまったということがわかりました。
スライムナイトは無理やり彼をチームに引き込み、今まさに参加権を奪うため、モンスター酒場に夜襲をしかけようとしていました。
ゴーレムは悩みました。
どうして、こんなことになったのか。
しかし、寝ている間に連れてこられた彼には、故郷へ帰る方法がわかりません。不用意に見知らぬ町を歩けば討伐隊にやられる恐れもありました。
「これは俺が自分の存在価値を証明するための最初の一歩だ! お前ら、遅れるなよ!」
あくまでも自分のために戦うスライムナイトが酒場へ乗り込みます。
何を考えているのかわからないやみしばりがゆらゆらとその後を追いました。
わずかに遅れてゴーレムが歩を進めました。
後に退けなくなる、という確信的な不安を感じながら……。
数日後、
アラハギーロの闘技場の舞台で強敵と戦う3匹の姿がありました。
すでにMPの尽きた彼らに、敵は容赦なくはらわたをえぐっていきます。
サポートのホイミスライムのMPがなくなり、絶体絶命のピンチに陥った瞬間、猛きたましいを発動させたゴーレムの一閃。
見事敵を打ち倒しました。
Bランクへの昇格試験をパスし、勝ち鬨を上げる我が魔軍。
拳を突き上げるゴーレムの頭の中に、故郷の景色はもうありませんでした。
いよいよ再開したバトルロード攻略。
全員アタッカーとなった我が魔軍には優れたサポート仲間が必要不可欠。
果たしてこのまま順調に勝ち進むことができるのでしょうか。
最後にレギュラーの栄冠を勝ち取るのは誰だ!