時渡りや指針書を盲信して、このままではいずれ滅びるという生きかたをしていたのがエテ王国の人々だった。グランゼドーラの人々は、国が滅びそうになってもたいせつなことを忘れずにいたから、伝えるべきものをいまに伝えることができた。オルセコのオーガたちはたいせつなことを最初から知っていたから、滅びもしなかったし歴史が変わってもたいせつなことは変わらなかった。
予知とか時見とか時渡りとか何の役にも立たないよ。
くだんの繭がドワチャッカに現れる。砂防ダムでひさしぶりに会うビャン・ダオ曰く、ここには彼の故国ガテリアを滅ぼした大魔神が眠っていて、黒いパパスがその復活を目論んでいるようだ。やってることがいまいちわからないパパスだけど、なんか強いチカラをひたすら集めているようには見える。
いざ大魔神が造られたウルベア地下帝国へ。悪逆非道の陰謀家として存在を聞かされていたグルヤンラシュに会うことができる。この時代に飛ばされていたクオードと姉ミムメモに会うことができる。彼らとウルベアの皇女ウルタたち三人が望んでいたのは、過去に戻って、あの時に帰ってやり直したいということだった。
違う。違うそうじゃない(画像略)。
起きたことはどうしようもない。過去を変えることはできない。でも目の前にある現在を変えれば未来すら変えることができる。それが一貫してこの世界のテーマじゃないかと思ってる。
グルヤンラシュの所業は許されることじゃない。あの時に帰りたいという理由だけで、目の前にある現在を犠牲にすることを厭わなかった。目の前にあるものを助けることもできず、陥れすらして何を救うことができるのか。
再開したクオードの姿は、彼が告発したドミネウス王そっくりだった。彼が父親と異なることは、自分の過ちに気がついて後悔したことだけど、それで彼は引き返せない道を選んでしまった。彼はなんの言い訳もしなかったけど、なんの言い訳もできないことなんて彼はとっくに知っていた。
これは三人に向けたメッセージだ。
予知とか時見とか時渡りとか何の役にも立たないよ。過去に戻って、あの時に帰ってやり直すことなんてできない。その誘惑は、本当ならできるはずの正常な考えから目をそむけさせてしまう。エテ王国はそれで滅びようとしている。このままなら、歴史の通りにエテ王国は滅びるだろう。それは過去を変えられないからじゃなくて、エテ王国に生きるひとびとがたいせつなものから目をそむけているからだ。
その所業はガテリアを滅ぼした。その所業はウルベアをも滅ぼそうとした。
ウルタ皇女はすべてが過ちであったことを知らされて、目の前にある彼女たちの国を救う道を選ぼうとしている。古代オルセコが滅びなかったように、いまはないウルベアはドワチャッカを滅びから救う方法を現代に残していた。
クオードはあの時に帰りたいとか思うんじゃなくて、目の前で困っている人々を助けようとする道を選ぶべきだった。クオードにはそれだけの能力があるはずなのに、彼は自分が坊ちゃんで弟であることから抜けることができなかった。言ってもしかたのないことだけど、ディアンジやザグルフがいたら彼を止めてくれただろうかと思う。
ミムメモはあの時に帰りたいとか思うんじゃなくて、彼女が助けられるものを助ければいい。彼女をふっとばしてしまったのはマメミムだけど、時渡りの呪いに囚われたミムメモがどれだけ多くのひとたちを助けてきたかは、新エテ村にいるみんなが知っている。この時この時代のミムメモが、まだそのことに気が付いていなかったとしても。
それが感想だ。
確認できていないことがある。ウルタ皇女とリウ老師が残したものが、大魔神をなんとかする方法だったとしたら、それには大魔神製造で砂漠化するドワチャッカを救う方法が含まれていたということはないだろうか。もしかして、ゴブル砂漠にあるあの丸いものにウルベアが関わっていなかったか、調べる方法がないかと考えている。
エテキューブは試作品と完成品の二つある。一つはミムメモが持っていていまはマメミムが持ってるけれど、同じものが同時に存在するということはやっぱりこの世界における時間は相対的なものであるということだ。それは過去に起きていないことは起こらないということでもある。エテ王国や神儀の護堂で見かけたメレアーデは、たぶんこの後のメレアーデなのだろう。
防砂ダムの上で殴り倒した黒いパパスが闇のヴェールみたいなものをまとってたけど、はやぶさ二刀流マメミムは会心ダメージをぼこぼこ通すことができた。これが想定されていた正解なのかどうかはわからないけど、ファラスだったら主人をなぐりたおすことができるということかもしれない。
ウルベアは08号を遺した偉大な国だ。