光る白宝箱。それはときに輝くトラペゾヘドロンのように人を惹きつけてはぼうとく的な世界へと足を踏みはずさせる確率の使者である。蓋のすきまから覗き込んだ深淵のなかに、本来はありえぬ奇跡を見出したものは囚われ人のようにふたたびその光景を求め、噂を聞きつけたものがありもせぬ栄光を探して人生をないがしろにする。ロバート・マメミム・ブレイクもその例外ではない。
ところでルティアナに討たれた二柱ってアウターゴッドの眷属だよね(唐突に)。
狙ったひとにもそうでないひとにも、じつに不平等に恩恵を授けてくださるのが確率で、そこに唯一絶対の教えがあるとすれば「ゼロより1は必ず多い」だろう。機会を得たものが必ず栄光を掴みとるとは限らないが、機会を放棄したものには永久にそれは訪れない。海の底にはふかくてここちよい生がある。ディープワンが拾い上げた、あるいは気まぐれに漁師の網がひきあげた宝がひとを深淵にいざなう。
ことのきっかけはミムメモだ。タウン管理用のサブだけど、せっかく存在する枠を使わない手はないから、マメミムひとりでまかないきれないなかまモンスターを何匹か育成する。最近つかまえたのがマジカルハットのニコちゃんで、こいつのなつき度を上げるために野獣の巣でトロルをころしていたところに光る宝箱がひとつ。
バレットハンマー呪文発動速度埋め。
もうトロルもニコちゃんもどうでもいいと、途中だったどうぐ使いクエストを終わらせるためにデルクロア師匠の研究室に飛んでいく。とりあえずデルクロア師匠のかっこよさにほれなおしつつ、魔界を旅するマメミムがさいごまで欲しくて手に入らなかった呪速埋めハンマーを、ミムメモがひろうかなあというのも白宝箱の醍醐味だ(マメミムは神域ハンマー呪速x2をけっこうなおねだんで買いました)。
高望みしてもきりがない。それでもほしいというならば、未知なるカダスを夢に求めてギガデーモンでも狩りつづけるしかあるまい。ガード埋めはやぶさ剣がほしくてガーゴイルを2千匹、マヒ埋め妖蛇がほしくてメーダを4万匹くらい狩っても手に入るとは限らないけど、試さなければ確率は永久にゼロのままで変わらない。
ひとは光る白宝箱の隙間からかいま見える幻影に取り憑かれて諦めることがない。特定の角度と時間が合わさる瞬間にティンダロスの犬が訪れるごとく、たんなる都市伝説やゲンかつぎに頼ってでも「ゼロではない」可能性をめざす。女神に討たれた渇欲の邪神ガルザンドは滅びてなどおらぬ。カルサドラの奥深くにあったそれが、かつて持ち出されていまも隠されていることを知るものがいる。
奇妙に思ったことはないのか。ありえるはずもない可能性を引き当てた幸運な冒険者どもが世界に幾人もあふれているという事実に。ランプやルーレットやアクセサリ合成の結果が恣意的に操作されているにちがいないと思えるように、乱数は平等ではないという事実に。光る白宝箱に眠る栄光にたどりつくカギがどこかに存在するにちがいない。
いあ!いあ!満月と深淵が同時に見下ろす時間を探せ。幸運の数値を操作した後に挑め。そうではない。すべて世迷い言の都市伝説にすぎぬ。彼らは意図して、あるいは意図せずに真実に触れたときに手に入れる。属性耐性埋めの、呪文発動速度埋めの、ガード率埋めの、レアドロップ埋めの装備を。世界にはアウターゴッドが、人間とは異なる概念を抱えた外なる神が存在する。彼らの思惑を読み取ることができたものは、覗き込んだ深淵の奥底にある奇跡にたどりつくことができるだろう。それは
閑話休題。
つまりサブキャラで呪文発動速度埋めハンマーが手に入ってうれしいけどふくざつだなあという話に文字数を盛ってみただけなのだが、とりあえずどんな装備でも意外なつよさや使いかたがあるかもしれないから、倉庫の広さと相談しながら探してみるにしくはなさそうだ。なくても困りはしないけれど、あればうれしいもののために時間を費やすのもわるくないこともある。すみません正直いえばどうせならミムメモではなくマメミムでほしかったなあというくやしさをごましているのは内緒だよ。
姉よりすぐれた妹なぞ(以下省略)