いけにえの儀式でつくられた野蛮な剣と楯をたずさえる。真のチカラを解放するには六柱のカミサマに認められたものが行くことのできる審問宮で、女神ルティアナじきじきに用意した試練を受けねばならぬ。種族神は七柱なのにどうしてひとつ足りぬのか。彼らに認められたのになんで試練も必要なのか。試練を受ける場所がどうして審問なのか。そもそも三闘士は三人いるのにどうして一枠なのか。さっぱりわからないから根拠のない想像くらいはしてみよう。
真のチカラで六神合体して巨大ロボになる(なりません)。ルティアナにも迫るチカラを用意したのは女神ルティアナそのひとで、七柱いる種族神のうち六柱に認められればチカラを託される方法が示される。
であればこのチカラは女神にもしものことがあったときを考えてのものか。七柱の種族神をもうけておきながら、承認が六柱で足りるというのも神様自体が欠けるか割れたときのことを考えていたのだろうか。いずれにしてもルティアナは全知全能の存在ではなかったし、たぶん彼女もそれを自覚してなお多くのまちがいをしでかした。
汚染されたアストルティアを切り離して魔界にした。世界を守るために旧き世界の天使をいけにえにして神器をつくりだした。ひとを生き延びさせるために、ひととは似つかぬできそこないの羽つき生物に変えてしまった。そして彼女自身がつくりだしたこの世界の天使たちには、たかが使命のために残酷すぎるほどの永遠を与えた。
天空の檻フォーリオンにたどり着いた幾人かは気がついていただろう。
天空人には天使めいた羽はあるけど天使の象徴たる輪っかがない。兵士たちはかぶとをして頭を隠していたけれど、聖都の入り口にあるレクタリスのモザイクには後光めいた光輪が描かれている。そして聖天舎にあるふたりのいきものだけが堂々と頭に輪っかを載せている。彼らこそこの世界に存在する最後の天使たちだった。
神話の時代がそろそろ終わりを告げようかという頃に、世界を創造した女神は自分が全知全能ではないことも、種族神たちが完璧ではないことも承知していた。彼女は世界を守る切り札を創造する。七柱のうち六柱の同意があれば、世界に選ばれるほどの英雄であれば女神にも迫るチカラを授けよう。
たとえ種族神が欠けたとしても、しんかのひほうならぬ神化の儀で補充できるようにすればよい。そのための炉とカギを残し、カギを預かる天使をひとり、さみしくならぬようにもうひとりをこしらえた。彼らに永遠を与える代償として、彼らが時とともにすべてを忘れる不全を与える。神ならぬものは変わらぬ永遠に耐えられず、やがて狂気に至ることを女神は知っていた。
審問宮での試練はおざなりなものだった。女神が手を抜いたようには思えぬが、ひとが神化の儀で到達することもできる種族神に選ばれた英雄になにを試せばよいのだと、そこで女神の想像力は尽きたのかもしれぬ。諍いを調停して、過ちはその根源をたどる。あたりまえのことを忘れぬようにというつもりだったのかもしれぬ。自分たちにもそれができる自信はない。女神すらもあこがれる「協調」はその先にある。
なにがたいせつだったのか。
世界と魔界を分かつよう進言したのは賢者たちだった。女神がこしらえた神様たちは互いに争って大陸ひとつをばらばらにした。神化の儀で選ばれる英雄たちにも、完全無欠の人格者などいない。だけど世の中にはきみょうなことに、よいもわるいもなく頼まれたら「はい」とこたえるやつがいる。お笑いグランプリの名誉審査員にもなれるし辺境で研究をしている博士のズッ友にもなれる。勇者姫にとっての勇者様にもなれるし赤毛の魔王のともだちにもなれる。親密度が10になったら恋人にも親友にもなれる。
そんなおせっかいのおひとよしならば。神様に認められた先にあった試練がいつものおつかいクエストでも、文句を言いながらクリアしてくれるひとが世界に協調をもたらすかもしれぬ。誰からも、神様からも認められるのはそんなやつかもしれぬ。ならば女神の願いもかなえてはくれまいか。この世界にともにあるだけの、見知らぬひとを助ける協調の姿を見せてはくれまいか。
ぜんぶを助けてハッピーエンドになんてできるものじゃない。それでもぜんぶを助けようとするおせっかいのおひとよしがいてもいい。目の前でこまってるやつを助けるのに理由なんかない。それであたらしいクエストがでてきたら、また話をきいて「はい」とこたえればいい。創造者が望むひとの姿がそこにある。
そういえば、旧世界には天使から人間になったおひとよしのおせっかいがいたという。