ドラゴンキッズ。
小なりながら黄金を思わせる山吹色の鱗に身を包んだ竜の子供。
この魔物を見るたびに、私はある叙事詩を思い出す。天空の勇者にまつわる一連の物語の一つだ。
主人公は英雄デュムパポスの子にして伝説の魔物使い、リュケイロム・エル・ケル。
彼がまだ一介の旅人であった頃に出会ったのがドラゴンキッズのコドランだった。
はじめ、頼りなく火の息を噴出すだけだったコドランだが、リュケイロムと共に成長し、冒険も半ばにさしかかろうという頃には燃え盛る火炎を自在に操り、彼を大いに助けたという。
だが激しい戦いの中、彼らに別離が訪れる。死闘の果てに主人と離れ離れとなったコドランは魔界へと迷い込み、そこでさらなる成長を遂げる。
そして長い年月を経て、偉大なる竜となったコドラン改めシーザーを見出した少女こそは、リュケイロムの息女ポピレア・エル・シであった。
リュケイロムと再会したシーザーは、その強靭な肉体と雄雄しき吐息により、魔王との戦いに貢献したとのことである。
壮大な物語に、子供の頃の私は痺れたものだ。もし自分が魔物使いになるならば、きっとドラゴンキッズを友にしようと心に誓った。
あれからどれくらい経つだろう。
風のうわさによれば、時が来れば魔物使いたちはその力を冒険者に解放するとのことだ。
魔法戦士を辞するつもりはないが、兼業でも魔物をなつかせることができるなら、あの頃の夢を実現する機会かもしれない。そんな日が来るのを、願っておくとしよう。