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魔獣ビュブロス、そしてその父の姿を生き写しによみがえらせたレオン・ビュブロ。
父の遺志を継ぎ、命に代えて大賢者殿に復讐を誓ったその生きざまは、我々にとっては迷惑千万だが、潔いものではあった。レオン・ビュブロの魔王的な威厳は、あの暴君を思わせる。ドワチャッカとウェナ。遠く離れた2大陸を恐怖に陥れた2匹が酷似した外見をもつというのも興味深い話だ。調査隊への報告に値する。
だが、私を驚かせたのは彼らよりも、杖様とブロッゲン師。そしてルナナの関係だった。
杖として永遠に等しい時間を、ただ大賢者のためだけに生きる杖様。それを己の罪と呼びつつも、賢者としての使命に生きるブロッゲン師。単なる仲間や師弟と呼ぶには重すぎる鎖を背負った二人だ。
にもかかわらず、あのおどけた口調を気に入っているという杖様。侮れない人物だ。
そしてルナナ……。なぜ彼女が名声を求めるのか。杖様との関係。その全てはここに記すまい。
だが、怨念に命をささげたあの魔獣とルナナと、どちらが幸福なのか……孤児として育った身にはわからぬ苦労もあるらしい。はっきりとした反省の言葉は述べることなく、ルナナは去っていった。せめて写真ぐらいは撮らせてほしいのだが。
根は悪い娘ではない、という杖様の言葉に一応頷いておいたが、根が悪くなくとも、行動が悪ければ被害は同じことである。
いつまでも子供ではあるまいし、この一件が彼女を成長させてくれることを願おう。
そして次に会う時には、少しは役に立ってほしいものだ。今回も彼女の手柄はゼロである。
サディスティックなところが癖になる、とのたまう末期的な二人のお供はともかくとして、そろそろ良いところを見せてもらわないとこちらも困る。杖様との関係を考えれば、あまり悪い報告をしたくもないのだ。
本国への報告書には、賢者殿と杖様についてだけ記し、彼女のことを記すのは、また次の機会としておこう。