なりきり冒険日誌~修業
打ち寄せる波が白浜を染め上げ、照りつける太陽が白波を輝かす。
キュララナ海岸は風光明媚で知られるウェナ諸島の名所の一つだ。
その美しい景色を背景に、今日も向上心に燃える冒険者たちがタコメットを追い回す。
彼らの視界には白浜も波もなく、太陽も月もない。あるのはただタコとウルフ。たまにペンギンやヒトデも混ざる。風情も情緒もあったものではない。
だが私も彼らを笑うことはできない。今から私も、その光景の一部になるのだから。
剣と盾、フォースの力と基礎体力作りが終わり、修業にひと段落ついてからはここに足を運ぶこともなくなっていたのだが、久しぶりに足が向いたのは例の世告げのせいである。
今まで剣だけで戦い抜いてきた私だが、戦いが激しくなるならば、杖の扱いも心得ておいたほうがよい。剣と杖を使い分ける魔法戦士のスタンダードをようやく私も目指すこととなった。
その分、かつて魔法戦士となる前、旅芸人として得た力の一部は捨てることになるだろう。一つ得るには一つ捨てる。悲しいかな、凡夫のやることは常にこれである。
さて、そんなキュララナ海岸にほど近い海辺の交易所にたたずむ一人のウェディがいる。写真の男、カーラムである。
彼は考古学者であり、自称、旅から旅の渡り鳥ならぬ渡り魚だそうだ。
確かにウェナ諸島には数多くの遺跡がある。何かの神殿跡、墓標のようなストーンサークル……そのほとんどが何を目的として作られたのか解明されていない。ロマンを掻き立てるものだ。
いつか、彼とともにそんな遺跡をめぐる日がくるだろうか?
その日に向けて、ともかく修業あるのみ、である。