ヴェリナードの魔法戦士として戦う私の旅は、魔法の迷宮を除けば基本的に一人旅で、せいぜいが相方のリルリラやその場に応じた仲間を酒場で雇う程度である。
だが災厄の王との戦いの前後から、他の冒険者と共闘する機会が増えてきた。また、そこから新たな出会いも広がっていった。
彼らへの感謝の意を込めて、そのいくつかを記しておこうと思う。
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紫紺の魔猿、バズズとの戦いは、Z氏の誘いにより実現した。
メンバーはZ氏のほか、共に災厄の王と戦ったM氏。
そして以前から顔は合わせていたものの、共に戦う機会のなかった旅団員YS氏とは、初の共闘となった。
初戦、瞬く間に壊滅。
敗因は他ならぬ私。後衛を守る壁の役割を担っていたのだが、呪文の詠唱に気を取られ、バズズに壁をすり抜けられてしまった。これにより後衛が壊滅。一瞬の出来事だった。
このままでは引き下がれぬとばかりにYS氏がもう一枚のコインを調達してきた。さすがの行動力である。
とあるベテラン冒険者の弟子筋にあたるという彼女は、師の経験と知識を引き継ぎ、巧妙な立ち回りを見せる。私も今度は呪文よりも敵との押し合い……エルトナ風にSUMOと呼ぶことも多いが……を重視し、かろうじて壁としての役割を果たす。
倒れた魔猿が落した「おいしい水」で疲れを癒しつつ、壁役の責任の重さを噛みしめる私だった。
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大悪魔ベリアルとも戦った。やはり主催はZ氏だ。
今回のメンバーは、やはり災厄の王と共に戦ったH氏、そして私と同じ魔法戦士として様々な逸話を持つ奇才、BDG氏。
残念ながらお互いに戦士と僧侶という本職以外の職業での共闘となったが、一度は魔法戦士としての彼を見てみたいものだ。
Z氏から聞かされていた様々な奇行とは裏腹に、BDG氏自身は謙虚な常識人という印象だった。常識を知らずして常識を破ることはできない、ということか。
悪魔の雷、ジゴスパークを体当たりで阻止しながら優勢に戦いを進めるが、突如、空間転移の魔術により、敵の姿が消える。魔法の迷宮では度々おこる現象だ。
一瞬で壁を突破され、いささか焦ったが立て直しに成功し、無事討伐することができた。
悪魔の残した「サイコソーダ」の刺激的な味でのどを潤し、我々はお互いの健闘をたたえるのだった。
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そして再び魔猿との対決。
メンバーはZ氏、H氏、そして今回初めて対面したドワーフのMW氏。
彼女は私以上に一人旅に慣れた冒険者で、酒場の仲間たちすら雇わずに強敵への挑戦を繰り返し、先日はキングリザードを単身で撃破したという。
キングリザードといえば、熟練の冒険者であっても回復を忘れて突撃すると返り討ちに合うと言われるほど危険な相手である。彼女の実力と戦術の冴えは、この一事でも理解できるというものだ。
僧侶が一人という、やや不安定な構成だったが、危うげなく勝利をつかむ。
バズズ特製「ミックスオレ」の甘味を堪能しつつ、我々は再会を誓い合った。
この他、ガートラントのバザーでばったりと旅団副長、AST氏と出会ったこともあった。まったくの偶然である。
せっかくの出会いなので、少々強引だったが迷宮へとお誘いし、快く承諾してもらった。
迷宮にてめぐり合わせた他のメンバーも気の良い人々で、和気藹々とした楽しい時間を過ごすことができた。
さらについ先日、私が拠点の一つとしているラッカランにて素材を出品していると、突然後ろから声がかかった。
「もしや"幻影"殿では?」
振り向くと、そこにいたのは一人のプクリポ女性。
幻影、とはZ氏が私を紹介する時に使った言葉で、少々気恥ずかしいがいつの間にか私のあだ名の一つになっている。
直接の面識のない女性だったが、その名を知っているということは、Z氏の知り合いだろうか……
と、考えていたところ、災厄の王との戦いで女僧侶として力を貸してくれたW氏の縁者であると名乗ってくれた。
プクリポのGN氏はランプ職人で、後で知ったところによるとその腕前は国宝級とたたえられるほどだとか。
詳しい話は聞けなかったが、どうやら主となる冒険者を職人として支えているサブメンバーらしかった。
偶然の出会いに感謝しつつ、再会を約束する。
こうしてみると、気ままな一人旅ばかりだった私の旅にも、既に様々な人物が関わってきている。
その変化を受け入れている自分にも気づかされる。
迷宮ばかりでなく、他の旅でも、時間の都合さえつくならば、たまには誰かと連れ立ってみても良いかもしれない。
ちらりとそんなことも考えた。
これは一時の気まぐれか、それとも自分自身の変化なのか。
どちらにせよ、それを楽しんでみるのも一興。
そんなことを思いつつ、立ち寄った裁縫ギルド。
ここで私はまた新しい誘いを受けることになった。