白亜の城、我らがヴェリナード。女王陛下の慈愛と陽光を照り返し、輝く水の流れを中心に築かれた美しい水の都。
高々とそびえ立つシェルブリッジは幾多の名工を世に送り出したドン家の手による最高傑作である。
それを見上げる城下町。そこで待っていたのはα氏の他、彼女の身内であるというS氏、同じく友人であるというM氏だった。
いずれもα氏が主宰するチーム、エレ・リブレの面々だ。少々緊張気味の私を、"自由の翼"は温かく迎え入れてくれた。
白い法衣に身を包んだM氏は武闘家、コケティッシュな衣装のS氏は盗賊として共に爪を振るう。
チームリーダーのα氏は僧侶として全体をフォロー。
私は魔法戦士としてアタッカー二人の援護役を担うこととなった。
蘇生呪文の使い手が一人という攻撃的な構成だったが、万一に備え、バックアップメンバーとしてプクリポのE氏が待機するという。伝説の魔物使いを思わせる衣装のE氏も、やはりエレ・リブレの一員だ。
連戦に向け、安定性よりも一戦の時間短縮を狙う……なるほど、こういう戦い方もあるのか。
パーティで戦うと言えば魔法の迷宮ぐらいであった私にとっては、新鮮な戦術だった。
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やがて戦いが始まる。
暴君は荒ぶる牙を所狭しと振るい、闇の稲妻で陣形をかき乱す。当初、剣をもってS氏、M氏と共に前線に立っていた私だが、上手く連携できず、バイキルトやピオリムの詠唱中に闇の稲妻の直撃をことごとく喰らう始末だった。
何度か撤退し、E氏のお世話になる。これ以上足を引っ張るわけにもいかず、私は途中から杖による援護に切り替えた。
やや距離を保ち、攻撃に巻き込まれないように立ち回りつつ補助とパサー、ロストアタックに集中。早読みの杖を可能な限り持続し、迅速な再強化を心がける。
本来、壁役や攻撃役をこなしつつ援護も的確に行うのが理想であり、少々不恰好な戦い方となってしまったが、さすがにエレ・リブレの面々は戦い慣れたもので、続けざまに暴君をねじ伏せる。
やがてバサグランデの巨体が光に包まれ、青い宝珠へと変わっていく。
これでしばらくは復活も収まるはずだ。そう、しばらくは……
互いの健闘をたたえ合い、別れた我々だったが……。
杖と剣の使い分け、そして壁役と回避を共にこなすための適切な距離感。私にとっては、また様々な課題が浮かび上がった形である。詠唱時間の分、回避が難しい点が魔法戦士にとってはネックとなるか。
新しい環境に身を置くたび、新しい目標が生まれる。そういうものだろう。
次に共闘する機会があれば、もう少しうまく立ち回れるよう努めたいものだ。
今回はさまざまな意味で新鮮な戦いだった。初めて共に戦う仲間、連戦、そして杖をメインにした戦い。
さすがにそろそろ練習用の杖は卒業した方がよさそうだ。
私はガートラントのバザーを訪ね、呪文の詠唱を助ける錬金術の施された装備を探した。
魔法の小手とルーンスタッフ。常に使うことになる小手は多少豪華に19%の錬金物を。使い分けることになる杖はそこそこ程度に14%で安めのものを。
合計約24万G+ドレスアップ代。これが有効な投資となるかどうか、使いこなしてからのお楽しみ、である。
余談ながら、ノーブルコートと合わせる場合、小手のドレスアップには細心の注意が必要となる。
ノーブルコートの袖は、先の部分が細くすぼまった形になっている。
これは折り返しのある小手と併用することを想定しているためで、手元だけを覆うような小手と合わせると、たちまちバランスの悪い衣装になってしまう。無論、例外はあるが。
そんなわけでドレスアップ用の小手を探すことになる。ノーブルグローブが使えればよいのだが、例によってそれだけで10万以上の出費だ。私が支給された当時は2万程度で買えたことを思えば、この暴騰は数字の暴力と呼ぶより他に無い。
幸いにもタダ同然のウロコの小手が形状的にも色合い的にも使いやすい。ウロコの部分を少し塗り替えてやるだけでいいだろう。
出費と見た目の兼ね合い。さほど裕福でない私には、こういう地味な工夫が欠かせない。
華やかなドレスアップも、地味な作業の積み重ねから始まるのである。
どの世界も甘くはない。新たな装備と共に、私は地道な素材集めに赴くのだった。