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砂塵の中、おぼろに見える影がある。仁王立ちする巨大なシルエット。すわ、と駆けつけた私を出迎えたのは、カラカラと音を立てて回る風車だった。
砂漠の地下には坑道とトロッコ。この風車は地下施設の動力にでも使っているのだろうか……?
「砂塵にうごめく大巨人」
七不思議を追い求め、砂塵と言えばゴブル砂漠だろうと目星をつけてやってきた私だが、どうやらこの謎も順調とはいかないようだ。
大巨人のみのみならず、七不思議を目当てに集まる冒険者たちの姿もない。耳聡い彼らのこと、既に正解を探し当てているはずだ。とすれば、この周囲は不正解か。
そういえば、クティから見せてもらった資料の中に、巨人と木を比較した図があった。草木実らぬゴブル砂漠に目を付けたのが、そもそも間違いだったのだろうか。
探し疲れて日は暮れて、夕陽の色をやや残した空は紫色に染まっていた。
私は砂漠を行きかうキャラバン、スコーピオン商会が休憩に使う旅人宿に寝床を求め……そこで気になる人物と出会った。
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あのペンダントは今、どこにあるのか。そうつぶやくこの男の名はサムエル。見るからに熟練の探検家といった風貌だが、ペンダントと聞いて思い出すのは世告げの姫、繋ぎ手のメルエのことである。
彼女が口にしていた人物とは名前が違うが、どうにも気になる。サムエル氏の名は覚えておこう。
意外な出会いはあったものの、この日も特に収穫は無し。
いくつかの風景写真を旅の土産にしておこう。