金は天下の回り物。アストルティアの沙汰も金次第。あまり意地汚くなるのもどうかとは思うものの、冒険者たるもの経済に無関心ではいられないのは事実である。
私も御多分に漏れずバザーをこまめにチェックしているのだが、最近の物価高騰には閉口している。
そんな中、確か半月ほど前だが、注目していた一着の服がどういうわけかじりじりと値下げされていることに気づいた。
13万から12万、11万……10万を切ったところで購入に踏み切っ た。値が下がったとはいえ、10万近い出費はそれなりに懐に響く。もちろん、この後にドレスアップ代とカラーリング代が追加になるのだから、何をするにも金、金、金である。
さて、こうなると、妙にその後の価格推移が気になってしまうもので、購入済みの服の値段を翌日、もう一度チェックしてみた。
……9万。
私はバザーに背を向け、これ以上価格のチェックをするのはやめようと心に誓った。
自分自身を守るため、無知でいることは罪ではあるまい?
さて、装備品に話をもどそう。
私が購入したのは王宮魔術師のローブ(上)。
その形状とカラーリングの自由さから、ノーブルコートと上手く合わせせられるのではないかと、前々から狙っていた一品である。
だが、購入の時点で、私はまだこのローブを身にまとう資格を得ていなかった。
と、いうわけで七不思議を追う傍ら、魔法使いとしての修業にも励んでいたわけだが、このたび、ようやく着用許可が出る段階までの修業を終え、さっそくカラーリングに走る。
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ノーブルコートとの相性は思った通りだったが、ただ一点、想定外な部分があった。
それは腕部。
白い生地が残ることは分かっていたが、小手が腕の下に隠れるタイプとは気づかなかった。おかげで腕の白さを小手でごまかそうという目論見は彼方に消えることになった。
盾を装着すれば目立たないかもしれないが……こうなってくると細部にばかり目がいってしまうものである。もうしばらく、組み合わせを考えることにしよう。
さて、もう一つ。
このローブのために行った魔法使いとしての修業。これを無駄にするのももったいない。幸い、杖の扱いは魔法戦士として学んでいる。魔法使いとしても戦えるよう、装備と力を整えてみた。
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魔力覚醒の奥義を習得し、最低限の装備として水の羽衣を整える。
ノーブルハットとしてドレスアップされた奇術師のターバンは魔法戦士用のものと併用。敵によって水のサークレットと使い分ける。
正式な魔法使いとしての印可状は得ていないが、一応、戦力にはなるだろう。
私はこの装備と共に意気揚々とラギ雪原へと出向いていった。
七不思議の一つ、雪女がこの付近に出ると聞いたためだったのだが、結論から言えば今回も空振り。
そもそも、魔法使いとしてまだまだ未熟な私は雪女を待つ間、キラーマシーンに追いかけられる始末。これでは長期戦は難しい。
人を脅かそうとする雪女が大勢の冒険者に出迎えられてどんな顔をするのか、是非見てみたかったのだが、今回は致し方なし。
しかるべき職で、それなりの準備をしてから再挑戦するとしよう。