某月某日。引き続きレンダーシアにて。
ワルド水源から東へ。南東に流れ落ちる水の流れに背を向けて、向かうデフェル荒野は、水豊かなワルドから一転、ごつごつとした岩肌の支配する過酷な大地だった。
旅慣れた冒険者であれば苦にはならないのだが、ウェディにとって、この湿度の急激な変化は少々応える。背びれも耳ヒレも戸惑っているらしく、少々しびれるような感覚がある。
しかし環境以上に私の目を引いたのは、ここを闊歩する魔物の姿だった。
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一見してドルボードに乗った旅人と間違えそうになるアサシンブラッド。見るからに古代技術の遺物である。周囲にはゴーレムも徘徊し、かつてこの地で魔法文明が栄えたことを思わせる。
どうやら5大陸と同じくレンダーシアにも古代文明があり、その盛衰があったようだ。彼らがどのように栄え、朽ちていったのか。5大陸文明とどのようにつながりがあったのか。新しき地の古き足跡。興味は尽きない。
そしてその遺産の一部であろう建造物を、我々は早くも目撃することになった。
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天を貫く塔。比喩ではなく、本当に雲を突き抜け、そびえ立つ巨塔である。アラハギーロ王の名において封印された神話の塔、と、警告の立札が語っていた。湖上の休息所から見えたシルエットは、どうやらこれだったらしい。
近づけば、巨大な鍵穴のついた門が来客を出迎える。もっとも、この扉を開けたいならば、鍵よりも先にまず王の心を開かねばならないだろう。
アラハギーロ王国の名は三門の関所でも聞いた。我々にとって最初の目的地でもある。デフェル荒野の南、まだ見ぬ王国が旅人たちを待っているはずだ。