引き続きメルサンディの村にて。
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村人たちから詳しい事情を聞く。歌詠みのパニーノ氏が歌いながら状況を説明してくれた。これはパニックの症状なのか、単にそういう性格なのか微妙なところだ。
どうやら私がこの村に到着する少し前に新たな事件が起こったらしく、ことは一刻を争うようだ。状況を把握した私は、直ちに「現場」に急行しようと戦支度を整えていたのだが……
ちょうど支度が終わったころ、村の入り口から歓声が聞こえてきた。
なんでも「二人の英雄」の活躍により、事件は解決したのだとか。
どうも私の出る幕ではなかったらしい。やれやれ、これでは案山子と同類だ。
「のんびり支度なんかしてるからだニャー」
……少々耳が痛いが、猫の言葉には耳をふさぐことにしよう。
英雄の第一条件はふてぶてしさ、と、この村の英雄も言っていたそうだ。
言いえて妙。高木は風にさらされるものだ。英雄たるもの、孤高の高みにあってどこ吹く風と身をかわすぐらいのふてぶてしさが必要なのかもしれない。
ま、私は英雄豪傑には程遠いが……
帰還した英雄たちを我々も迎える。残念ながら「第一の英雄」との対面は叶わなかったが、「二番手」の英雄には直接会うことができた。ヴェリナードの魔法戦士として身分を明かした上で詳しい話を聞き、事の顛末を把握する。
どうやらこの村を襲った災厄が何であったのか、本当にこれで解決したのか。それは謎のままらしい。
魔物の正体は。その目的は……?
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道具屋サマナ氏も一緒に考えてくれたが、答えは闇のかなたである。
代わりに、といっては何だが、これも縁だから、とサマナ氏秘蔵のカジノチケットを頂いた。ラッカランも一応はレンダーシアの一部。何かしらの交流があったのだろうか? だがカジノのオープンはつい最近。あるいは、レンダーシアにわたってきた旅人たちが彼女にプレゼントでもしたのだろうか。事情を聞いてみたいところだ。
ともあれ、ひとまず危機は去った。
私は本国への報告のため、メルサンディを取り巻く地域の調査を引き続き進めるとしよう。
支度を整え、村を出ようとした私を呼び止めたのは、例の二番手の英雄殿だった。
言うべきかどうか迷ったが……と、躊躇いつつ、英雄殿は私にある、大きな「謎」を打ち明けてくれた。
その謎を口に出すのは憚られる。だが、英雄殿が私をからかおうとしているのでなければ、この村で、そしてレンダーシアで何かが起きていることに間違いはないだろう。
英雄殿の言葉を胸に刻みつつ、我々は周辺地域の調査を開始した。
まずはメルン水車郷、そして木漏れ日の広場を目指すことにしよう。