アラハギーロをめざし、旅路を急ぐ我々だが、セレド周辺の山岳風景は素通りするには惜しいものがある。
いずれゆっくり楽しませてもらうとして、今は気になる景色をいくつか覚書程度に記しておくことにしよう。 山のふもとから頭上を見上げながらドルボードを走らせる。
巨大な岩肌に時折、唐突に現れる扉は山脈を貫く坑道の存在を思わせた。
残念ながら扉は固く閉ざされていたが、メルサンディの例を考えると、この山の内側にも大文明の遺物が残っている可能性がある。
広大な自然そのものといったこのセレドット山脈の内側にどんな世界が広がっているのか、興味は尽きない。
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一転して山頂付近へ。夜霧にまぎれた雲を見下ろす絶景が私の目の前に広がっている。ここはセレドット。レンダーシア南部は高山地帯である。
雲を貫きそびえる高い山々の間に、かけられた橋もまた巨大。スケールの大きさに圧倒されそうになるが、これだけの橋を架けるには、よほどの人手が必要だっただろう。
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かと思えば、山脈から流れる滝を見上げる木造の橋は、いかにも素朴である。
滝の下には石清水が涼しげに流れる小さな洞窟があり、旅の疲れをいやすには絶好の場所だ。場違いな青蟹の存在がやや気になるが、近づかなければ害は無いものだ。
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地図を見る限り、この水の流れ着く先は、ダーマ神殿の周囲を囲む巨大な湖だろう。
ワルドといい、メルンと言い、このセレドットも含めて、レンダーシアは水豊かな地が多いようだ。例外と言えばアルハリ砂漠ぐらいか。
山頂から溢れる水は、東、リャナ地帯にも注がれているらしく、水の流れを辿るように、我々の旅路も東へと続いていくのだった。