某月某日、グランドタイタス号にて。
グランゼドーラをめざし、私は再び船上の人となっていた。
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レンダーシアへの航路が回復した、との報せがヴェリナードに届くのはこれが二回目だったが、今回はココラタではなくグランゼドーラへ、という点が異なる。
それは単なる目的地の違い以上の、大きな違いであるはずだった。
その証拠に、辿り着いたグランゼドーラは、かつて私が訪れたそれとは違う、爽やかな青空に包まれた王都だった。
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これが本来のグランゼドーラ。レンダーシアへの真の第一歩は、今ようやく、踏み出されたわけである。
城の外を闊歩する魔物たちの顔ぶれも、私の知っているものとは大分違う。そしてそこに流れる空気は懐かしくも新鮮だった。グランバニア王の伝説を思い出す。新たな旅の予感に私の心は早くも弾むのだった。
今回の私は、ヴェリナードの代表として赴く使者を護衛する立場にある。
航路の回復から数日の後、白亜の宮殿に一通の書状が届いた。グランゼドーラで催される祝いの式典への招待状である。
古来より、レンダーシアは5大陸との交流に乏しい。そこに件の魔瘴の件が重なり、もはや国交は断絶状態となっていた。
だが魔族の脅威も未だ去らず、先の大戦において多大な戦力を失ったグランゼドーラにとってこれ以上の孤軍奮闘は不可能との判断があったのだろう。
式典のセレモニーにおいてもグランゼドーラの王は他国との協調路線を強く呼び掛け、各大陸で功績を上げた人物を特別に表彰する制度を発足させたことを発表した。
俗にいうスタンプカード制である。
5大陸とレンダーシアを行き来する旅人たちにとっては、名を上げる絶好の機会であり、グランゼドーラにとっては各国に先だって全世界的な制度を作り上げることで権威を示す機会というわけだ。さすがに勇者の国の王というだけあって、見事な手際である。
我々にとっても、昨今、新大陸探索に浮かれすぎておろそかになっていた5大陸の調査、探索を再開する良い機会。一度5大陸を振り返ってみるのも良いかもしれない。
振り返ると言えば、あの紫色の黄昏に包まれた大地についても、あのまま放置するわけにはいかない。
あの場所が何であったのか、一応の説明は行われたが、私はまだ納得したわけではない。とりわけ、5大陸まで届いた勇者覚醒の光が意味したものは何だったのか……。
あれから何度か、私はココラタの浜に赴き、黄昏の大地を旅した。
かの大地でも、いくつもの事件が起きていたようだ。
曰く、破戒王の亡霊が現れた。曰く、メルサンディで再び怪物が目撃された……
私は豊穣の月の面々や他の友人たちと黄昏の大地を歩み、いくつかの戦いを共にした。ピラミッドを除けばレンダーシアでの旅を共にすることがほとんど無かった私にとって、これも新鮮な体験だった。
新たな探索、かつて探索した街や5大陸の探索、そして新たな技術の解放に向けての修業。それに金策。新時代を迎え、やることは盛りだくさんだ。
とはいえ、焦っても仕方がない。まずはスタンプカードを埋めることを目標に、マイペースで進めていくことにしよう。