キノコに腰掛け、夜空を眺めていると、まるで不思議の国にでもやって来たかのような気持ちになる。
透き通った夜空は青すぎるほど青く、月明かりで本も読めるほどだ。
紫色のカーテンに包まれた、かの大地を思いつつ、新たな大地に歩を進める。
私にとって既に見知った、しかし見知らぬ世界。違うのは空の色だけではあるまい。ここからまた、新しい発見と探求の旅が始まるのである。その果てしなさを思うたび、私の脳は歓喜と苦悩の入り混じった感情の奔流に襲われ、その激しさに眩暈すら覚えるのだった。
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「ニャにをぶつぶつ言ってるニャ」
人のモノローグに口を挟むんじゃあない。
猫魔道のニャルベルトが肉球もひたひたと、私の後をついてくる。引き続き、レンダーシア探索はヴェリナードと猫島から与えられた、私と彼の共同任務である。エルフのリルリラも、おまけについてきた。
レンドアからグランドタイタス号でグランゼドーラに到着した我々は、その足でレビュール街道を南下。遺跡街道にて多少の探索を行い、いくつかの発見もあったのだが、そのことについてはいずれ機会があれば語ることにしよう。
ともかく、我々は街道をひた走り、ゼドラ、コニウェア、ワルドの三地域を繋ぐ三門の関所が、ようやく見えてきたところだった。
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「で、どっちに進むニャ?」
地図を前にして悩むことしばらく。
ここから西へ進めばココラタの浜辺。あの異様な空気漂う浜辺が、霧の天幕の無いこの大地でどう変わっているのか、興味はある。
一方、南西にはメルサンディ。かつて同じ名前の土地を訪れた際、豊かな穀倉地帯や風車小屋を、青空の元で拝みたいと思った気持ちは今でも変わっていない。
そして東には砂漠の宝石、アラハギーロ。今回の宝石はイミテーションではないはずだ。巨大国家をまずは訪れて様子を探ってみるのも悪くない選択肢である。
迷った結果、私が選んだのはアラハギーロだった。
ピラミッドや神話の塔、そしてかの大地では謎めいた結末に終わった魔族との戦争……それら全ての謎を霧の中から引きずり出して、真相を暴いてやろうではないか……と、いうのは少々言い過ぎだが、ともかく、興味深いことは確かである。まずは一度訪ねてみるとしよう。
門を開く。と、ワルド水源のさらさらと流れる水の音が我々を迎え入れる。
青の夜空から、月さえもせせらぎと共に流れ落ちてくるかのようだった。