噴水の水が太陽の光を跳ね返し、さやかなきらめきを振りまく。涼やかな水の音と力強い陽光が彩る、ここは白亜の宮殿。
ヴェリナードに戻った私は事件の後始末に追われながら事の顛末を整理していた。
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レンドアには大した被害もなく、しいて言えば、海戦でレンドア近海が船の墓場のようになってしまったことをシガール市長が嘆いたくらいだった。
今回の事件の中心人物が潜んでいたアジトには、魔物使いの中でも有数の実力者が乗り込み、見事捕縛に成功したという。
特筆すべきは、クラハ殿のご子息が相棒としていたドラゴンキッズにまつわる意外な事実だろうか。
あまり詳細な記録を残すと後々、悪用する者が現れないとも限らないので、仔細は省くことにするが、ドラゴンキッズといえば、私にとっては、子供のころに読んだグランバニア王の伝説の中で最もお気に入りの魔物である。
その伝説ではグレイトドラゴンの子供とされていたが、今回はまた別の事実が報告され、その力強さは「おおっ、なんというせいめいりょく!」と、伝説の古代ロンカ文明の魔物にも匹敵する程の評価を受けたとか。
結局のところ、ドラゴンキッズがどんなドラゴンの子供なのかは魔物学者の間でも諸説ありはっきりとしないようだ。あれで成体だという噂すらあるくらいである。
あるいは、様々なドラゴンの幼少期の姿をまとめてドラゴンキッズと呼んでいるにすぎないのかもしれない。
魔物使い達の間では、ドラゴンキッズを手懐けるための書物が発見されたとの報が出回っており、近々、一般に公開されるとのことだ。
私も一匹、手元に置いてみたいものだ。
「ま、吾輩ほど優秀な魔物にはなれニャいだろうけどニャ!」
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誇らしげに張ったニャルベルトの胸には、銅ヒスイ星の勲章。
レンドアを救った礼として、猫島を代表して市長より賜ったものである。
「魔物使いの力とは無関係に共存する。お主らの姿はワシらの理想かもしれんな」
と、メドウ殿からもコメントがあった。少々持ち上げすぎのきらいはあるが、猫島のマンマー殿も、たいそう喜ばれているとのことだし、まあ、良しとしよう。
「それにしても奴ら、最近は大人しくしていると思っていたが、水面下でこんな計画を進めていたとは」
同僚が呟いたのは、魔物商人のことだ。確かに、何度踏みつけてもしぶとく生き延びて次の商売に精を出す奴らの生命力だけは大したものだ。
だが、奴らは魔法戦士団に加えて魔物使いも敵に回したことになる。
ラッカランのコロシアムでの騒動にも絡んでいたことが判明しており、バトルマスターからの評判もよろしくない。
根を叩くには時間がかかるが、包囲網は確実に出来上がりつつある。
各職業の連合軍で奴らを叩きのめすというのも、なかなか面白いではないか?
フォースブレイクの習得により、魔法戦士にとって、相性の良い職業も増えてきた感がある。彼らとの共闘は胸躍るものになるだろう。
その時に向けて、私も腕を磨くとしよう。