「俺たちはこれでメシを食ってんだ! 森のため、なんてわけのわかんねえ理屈で邪魔されてたまるか!」
違法伐採者の集団、自称「伐採同盟」のリーダーらしき男は、そう言い捨てて去っていった。
レーノスの内偵による事件の発覚から幾度かの小競り合いを経て、伐採同盟はついにレンジャー協会への宣戦布告を行うに至る。我々は自由な伐採の権利を求める、とのことだ。
頭を抱えるのはポランパン支部長殿だ。
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もし、レンジャーが自然崇拝者の集まりであるなら、ことは単純だ。森に仇なす伐採同盟に鉄槌を下せばいい。
だが、レンジャー協会の理念はあくまで人と自然の共存。密猟者の取り締まりや自然保護の活動が目立つため、どうしても自然寄りのスタンスが目につくが、別段、森を神聖視して崇拝しているわけではない。
その意味で、今回の事件は非常に厄介なものだった。
「何が同盟だ。無法者の集まりだろうが!」
レーノスは吐き捨てる。
レーノスは、協会でも中堅どころにあたるレンジャーである。口は悪いが腕は悪くない。彼の言葉はある意味、的を射ている。
そう、問題は法、なのだ。
「ともかく、野放しにはできんのう」
支部長が溜息をつく。
「アズランのギルドに問い合わせてみては?」
と、末席から私は提案した。
風の町、アズランはこのモリナラ大森林から南にある静かな町である。そのアズランに、きこりのギルドとも、伐採ギルドとも呼ばれる組織がある。未だ一般公開されていないため知名度は低いが、伐採同盟と伐採ギルド。何か繋がりがあってもおかしくない。
「むう、そうじゃのう」
話し合いの結果、支部長の書いた手紙を私がギルドまで届けることになった。
「手紙を届けるなら、お手の物だもんな」
レーノスが肩を叩く。ええい、何度でも言うが、私は郵便局員ではないッ!
こうして、私は別働隊としてモリナラを離れることになった。
森に残ったメンバーはレーノスを中心として同盟の活動規模や構成人数を探る。二面作戦で敵の正体を洗い出すわけだ。
どうやら、魔法戦士団の任務と似たような具合になってきた。そういう星の元に生まれついたのだろうか。
弓の技を教わりたかっただけなのだが……
苦笑しつつドル・パンサーにまたがり、私は森を後にした。