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悠久の回廊をゆく。郷愁と共に、試練は私に大事なことを思い出させてくれた。
マデサゴーラが創生の力を手にすれば、その影響はレンダーシアだけにはとどまらない。レーンの村だって、どうなることか。
「捨てていくわけじゃあ、ないぞ」
幻の故郷に、言い訳するように私は呟いた。戦いは、故郷を守るためでもあるのだ。
それにしても……
最後の戦いに向けて旅立った先に故郷の幻とは、どこかで聞いたような話だ。
古い伝承にある雪の大地、ロンダルキアで、勇者の血を引く王子たちが、同じような体験をしていたはずだ。
まさかバズズ達がこの一件に絡んでいるとは思わないが……。
私は精霊神の守りは持っていないが、辛うじて幻を打ち払うことができたらしい。
「しかし、チャンスだったかもしれんな……」
腕を組む。
もし伝承が真実なら、あの幻の中で呪われた武具を身につければ、呪いの力を逆利用する幻魔剣の奥義に目覚めることができたのかもしれない。呪いの武具は持っていないが、隼の剣なら、手元にある。
「ま、笑い話か」
今は早く先に進み、勇者たちと合流することだ。あの故郷でどれだけの時間が流れたのか、正確には分かっていないが、かなりの後れを取ったと考えるべきだろう。
最後の戦いに遅参するようでは、魔法戦士の名折れ。
速足で駆けていくと、足跡が燐光を放って空に散っていった。