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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2015-02-28 23:49:47.0 テーマ:その他

なりきり冒険日誌~砂漠の渇きを癒すもの(1/4)【アラハギーロ配信・ネタバレ有】

 某月某日
 砂漠を渡る風がオアシスを優しく撫でる。
 アラハギーロの市を行きかう人々の姿を眺めつつ、私は筆に息を吹きかけた。  この街はつい先日まで、大きな事件の渦中にあった。
 それが片付き、曇りきっていた"アルハリ砂漠の宝石"は輝きを取り戻しつつある。 
 事件解決の中心となった少女、セラフィは今、街を覆う屋根のような宮殿を我が家として、相変わらず人々のために奔走しているはずだ。
 私は今、この事件について、ヴェリナードへの報告書をまとめている最中である。
 多くは伝聞となるが……まずは、私が直接関わった、事件の黒幕について、記しておくことにしよう。

 彼の顔を思い浮かべる。と、同時にあの笑い声が頭の中に響いてきた。

「ヒョーッヒョッヒョッヒョッ!」

 下品な笑いが乾いた砂をかき混ぜた。
 エキセントリックな髪形と笑い方が特徴的なこの老人を、ヒョッヒョマンと名付けたのはセラフィである。チョメの時といい、彼女のネーミングセンスには驚かされる。
 彼の本名をキルギルという。あの魔勇者を異形の怪物へと"改造"した、いわゆるマッドサイエンティストの類である。暴走した魔勇者に踏みつぶされて以来、音沙汰がなく生死も不明だったが、やはりしぶとく生きていたようだ。
 悪党ほどよく眠るとは言うが……。

「今度の研究成果は、あの魔勇者を超える逸材ですよ!」

 と、キルギルは自信たっぷりに、小柄な体をそらせて笑った。
 だが、そこらにいる魔物と同じようにしか見えない彼の「研究成果」を一瞥し、私は肩をすくめたものだ。
 同行した冒険者達も苦笑を浮かべていた。彼らはセラフィが個人的に協力を取り付けた友人だというが、その何名かは"勇者の盟友"として知られる、名のある戦士達だった。
 彼らの目にも、目の前の敵があの魔勇者ほどの相手には見えなかったようである。
 だが、そんな感想を知ってか知らずか……この手の輩が相手の反応を気にすることはまず、無いのだが……キルギルは尊大に両手を広げ、高らかに宣言した。

「この国を亡ぼすことでそれを証明し、大魔王マデサゴーラ様に我が研究成果の粋を献上するのです!」
「いや、マデサゴーラなら死んだぞ」

 私は努めて軽く、そっけない口調でそう言ってやった。
 手を広げたまま、老魔道士は停止した。
 目を見開き、パクパクと無言のままに口を動かす。私の言葉は豆鉄砲。彼は一羽のハトである。

 研究室にこもりきりで、自分が仕える魔王の死すら知らなかったのだろうか。全く、学者の世間離れも大概にした方がいい。
 いや、あるいは……
 私は腕を組み直した。
 魔勇者の改造計画に失敗した時点で、とっくに大魔王から切り捨てられていたのかもしれんな……。
 情報も資金も"研究素材"も与えられず、苦し紛れに漂っていた悪霊を捕まえて「これこそ逸材!」と騒ぎ立てているのだとすれば辻褄が合う。

「ヒョ……ヒョーッヒョッヒョ!」

 停止してた高笑いが再び響き始めた。やや震え気味ではあったが。

「そんな言葉で私を惑わそうとしても引っかかりませんよ。心理的トラップという奴でしょう」

 人差し指を立ててほくそ笑む。何故そういう方面にばかり想像力が働くのか。実に羨ましい精神構造である。

 戦い自体は、比較的あっさりとしたものだった。
 学者だけあって、なかなかユニークな戦い方をする相手だった。このアラハギーロで魔物使いの得意技を使ってみせるのは、ちょっとした皮肉か。
 だが、魔王とさえ五分に渡り合った勇者の盟友たちが、この程度の相手に後れを取るはずもない。私は援護に徹するだけで良かった。
 ほどなくして決着はつき、魔道士は捨て台詞と共に、空に溶けるように消えていった。
 マデサゴーラなき今、彼はまた別の勢力に取り入って研究を続けるのだろうか。
 そもそも、魔族たちの住む魔界とやらには、マデサゴーラ以外にも権力者が存在するのかどうか。その辺りの事情も気になるところだが、今は追跡の術もない。
「本当に、惜しいですねえ。捕まえて悪霊も魔道士も研究サンプルにしたかったのに」

 そう呟いて猫のように大きな瞳を曇らせたのは、アラハギーロ宮殿に使える研究者、発想が「ダーク」な「ルシャ」女史である。

「おっかない女だニャ」

 猫魔道のニャルベルトが呟く。ご同輩じゃないのか?

「毛並が違うニャー」

 ニャルベルトは灰色の毛皮をふさふさと撫でた。
 そういえば、闘技場にはコマド老人というのもいたな……。バステトは猫の神だというし、このあたりは猫も多いのかもしれない。

「あいつら、ニガテだけどニャ……」

 ニャルベルトが、猫の顔に精いっぱいの複雑な表情を浮かべた。
 確かに、この国の住民たちの豹変ぶりには、私も複雑な気持ちだった。
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