
灼けた大地を歩くこと数刻、我々は寂れた雰囲気の漂う山村へとたどり着いた。
角のように突き出した岩肌と、それに沿って作られた無骨なつくりの家屋は、オーグリードのランガーオ村を思い出させる。
もっとも、あちらは凍えるような雪景色。このアペカの村は身を焦がす灼熱の大地。その意味では真逆の光景である。
……にも関わらず、住民たちの衣服は大差ない。むしろランガーオのオーガたちの方が薄着である。まったく、ヌーク草の力ときたら常識外れな……いや、オーグリード文化の悪口はやめておこう。今はナドラガンドの探索が先決だ。
住民たちは皆、物珍しげに異邦人の姿を覗き見る。遠巻きに我々を見つめる彼らの目には、爬虫類を思わせる細い瞳が揺れていた。
我々もまた彼らの姿を観察する。頭部に角を生やし、肌に鱗持つ彼らの姿を。

思った程人間離れしていない。それが最初の感想だった。
奥の岩に腰掛けた若い女性など、遠目に見れば人間やオーガとそう変わらない。肌の色は様々だが、それはお互い様である。青い肌の何が珍しいのか。
奈落の門で戦ったあの竜族は、風貌、実力ともに魔物めいた迫力があったが……良くも悪くも、あくまで彼が突出した人物だったということなのだろう。
どこを見ても女子供と老人ばかりで、若い男性の姿が見当たらない点は気になるが……いずれ事情を調べてみることにしよう。
村には住民たちのほか、多くの旅人の姿もあった。我々と同じく、アストルティアからやってきた冒険者に違いない。見たところ、竜族との間にはトラブルもなく、自然と受け入れられているようだ。
竜族の適応力の高さに感謝しつつ、我々は村の探索を開始した。