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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2015-09-12 00:27:24.0 テーマ:その他

なりきり冒険日誌~大きな炎の木の下で【3.1新マップに関する記述有り】

「落陽を思い出すね」

 エルフのリルリラがそう言った。
 紅葉を思わせる色とりどりの葉が、枝の上に揺れていた。深いオレンジ、鮮やかなピンク、くすんだ黄色。ゆらゆら揺れて、確かに美しい。
 その葉から零れる火の粉さえ気にしなければ。  サイケデリックな油の虹が空に渦巻き、周囲には燃え上がる大地。そして高くそびえる炎の大樹。美しくも混沌とした光景が私の前に広がっていた。
 ここは炎樹の丘。
 聖都への道を阻まれた我々はナドラガ教団とのコネクションを求めて一度アペカに戻り、かの村に滞在していた女神官との面会を希望した。が、手に入ったのは彼女が若い竜族の男と連れだってこの丘に向かったという情報だけだった。
 すぐさま後を追い、南下。休む暇もない。
 一体、こんな場所に何の用があるのやら。

「え? デートじゃないの?」

 リルリラは首をかしげる。

「男の人と二人きりでしょ?」
「デートスポットにしては、ちょっと物騒じゃないか、ここは」

 強い風が吹くと、落ち葉が火の粉となって雨のように降り注いだ。これを相合傘でしのぐのが竜族の若者たちの流行……だとしたらお付き合いは遠慮したい。恋の炎で焼き魚なんて真っ平御免だ。

「ウェディは情熱的なんでしょ」
「エルトナデシコは、もっと慎ましいはずなんだがな」

 他愛もない軽口を叩き合う。
 ……と、その時。パチパチという燃焼音を掻き消す、高く芯の通った音が一滴、木陰から零れ落ちた。
 水滴が次々と金属の上に落ちるように、誰かが奏でるハープの音色が響く。続いて歌声。

「炎のように燃え上がる、聖なる鳥よ……」

 大樹の裏側を覗き込む。リルリラもひょいと首を伸ばした。
 薄絹の法衣に身を包んだ美しい女の姿があった。恐らく、噂の女神官だろう。歌声の源は、彼女だ。切れ長の瞳に溢れる知性の光を灯し、炎を照り返して薄桃色に染まった髪を緩やかになびかせて歌う。
 その傍らには、ハープを奏でる男。竜族の逞しいイメージに反して、繊細そうな面持ちの青年である。
 男は瞳を閉じ、半ば恍惚とした表情を浮かべて不可思議な曲を奏でる。女はそれに合わせて、溶けあうように優しげな歌声を響かせる……
 ウウム……この様子。本当に逢引きの最中だったか?
 出ていくのも憚られ、幹に隠れて覗き見る形になる。これではまるで出歯亀だ。

「隠れなくてもいいんじゃない?」

 と、リルリラがつまらなそうに指さした。

「デートじゃなさそう」

 指の先を追うと、竜族の男のさらに向こう側に、彼らの歌を聴く数名の男女の姿があった。どうやら二人きりではなかったようである。
 かといって演奏会の類でもなさそうだ。この地方に、歌を聴くのに武装する風習があるなら話は別だが。

「この地方の人でもなさそうだしね」

 リルリラの言う通り、彼らは竜族ではない。アストルティアからやってきた冒険者だ。
 中には見覚えのある顔もあった。確か、勇者の盟友としてその名を馳せた英雄だ。
 歌を終えた女神官は彼らと何がしかの交渉をしたらしかったが、どうやらそれは破談に終わったらしい。
 やや気落ちした様子で冒険者たちに背を向け、その場を立ち去る。演奏家の青年も同じだ。取り残された冒険者たちは意外そうな表情を浮かべで立ち尽くす。
 詳しい事情はわからないが……私たちにとっては好機と見えた。

「何かお困りですか?」

 木陰から声をかけた私に女神官、エステラ嬢は驚いたようだったが、アストルティアから来た冒険者と名乗ると、安堵したように頷いた。
 聞けば、これから危険な場所へと赴くため、彼らに護衛を頼んだが断られたとのこと。渡りに船だ。恩を売るには絶好の機会。
 我々は護衛役を買って出た。目指すは北東、煉獄の谷。詳しい話は道すがら聞くとしよう。

 それにしても……
 あの盟友殿であれば、護衛など朝飯前のはずだ。何か断る理由でもあったのだろうか。
 後日、再会した時に、このことを問いただしてみた。

「いや、てっきり断っても食い下がってくると思って……」

 英雄は、ばつの悪そうな顔をした。やれやれ、悪戯心が裏目に出たか。エステラ殿は伝説の姫君と比べれば諦めの良い人物だったようだ。
 ま、それは後の話。今は聖都への門を開くことを考えよう。
 火吹き花が咲き乱れ、マグマの川が赤黒く流れるその先に、どうやら道は見えてきた。竜の鳴く声が谷間に響く。険しい道だ。

「ここから先が煉獄の谷です。皆さん、お気をつけて」

 神官は静かに宣言し、迷いなく足を踏み入れた。
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