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紹介人に手配され、私の元にやってきた魔法戦士達は一様に、淡々とした仕事人の表情を浮かべていた。
戦いぶりもまた然り。魔法戦士特有の欲望……援護の合間に、隙あらば攻撃に回ってやろうという、あの愛すべき、厄介な衝動が、まるで感じられない。
機械の如く冷徹で、合理的なのだ。酒場で雇った魔法戦士はみな、こうした印象がある。ある意味、見習うべき存在である。
だが少なくとも今回に限って言えば、それが裏目に出た。
何しろ、魔法戦士以外に攻撃役がいないというのに、放っておくと全員が援護に回ろうとする。フォースブレイクが決まった時でさえ、彼らは攻撃せずにMPパサーを使うのだ。欲がないにも程がある。
かと言って、攻撃専念の指示を出すと、今度はフォースブレイクを使わなくなってしまう。私は天を仰ぎ嘆息した。
今に始まったことではないが、彼らの欠点は融通が利かないことだ。臨機応変に立ち回るべき職業ほど、その影響は大きい。
結局、何度か試行錯誤した結果、杖を持った一人のみバランス優先、剣を持った二人には攻撃専念を命じることにした。
考えてみれば、フォースブレイク役はそう何人も必要ないのだ。魔法戦士という概念に囚われず、純粋な攻撃役として参戦してもらおう。
私自身は、雄叫びで敵の大技を妨害しつつ、杖使いがしくじった場合は続けてフォースブレイクを撃つ役を担う。
後はマダンテを戦術に組み込むかどうかだが……今回の敵は光の呪文に強く、単発のマダンテでは劇的な効果は望めない。その上、杖使いのフォースブレイクはマダンテの準備が整うのを待ってくれない。
と、いうわけで、私はマダンテには拘らず、剣と盾を装備して挑むことにした。
そして……幾度目かの戦い。
杖使いのフォースブレイクを皮切りに、三つの剣が敵を切り刻む。宝珠により強化されたその剣は、鋼の翼と鋭利な嘴を備えた三羽の隼だ。敵が弱ったのを見て、ダメ押しのフォースブレイクを私が打ち込む。隼が荒れ狂う。こうしてまず、右手が倒れた。
私は攻撃役に専念していた剣使いに指示を出し、左手へのフォースブレイクを命じる。本来、連発できないフォースブレイクを立て続けに撃てるのは、このパーティならではの長所である。その様は、さながら古代エルトナの伝説的武将、オダ・カズサノケスが編み出したという秘技、三段撃ちの如し。
こうして、我々はなんとか、この強敵を打ち倒すことに成功した。
報酬は残念な内容だったが……ま、そのうち運が向いてくることもあるだろう。
今回の戦いで強く感じたのは、魔法戦士が複数いる場合の強み……フォースブレイクを何度も打てる便利さである。
さすがにこの構成であらゆる敵と戦え、と言われれば途方に暮れるだろうが、魔法戦士二人にアタッカー、僧侶といった編成は意外と悪くなさそうだ。
機会があれば、試してみたいと思う。
普通ならば決して組まないような構成であえて戦うことで、何か別のものが見えてくるとしたら……試練の意味はそこにあるのかもしれない。
「うむ。それこそが真の報酬というものじゃ」
達人プクッツォは満足げに頷いた。
「……それはそれとして、実際の報酬も弾んでくれると助かるのだが」
「雑念が消えとらんのう、お主」
ため息がオルフェアの夜空に溶けていった。頭を掻く。
達人への道は、まだまだ遠い、らしい。