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黄昏の空が、砂漠の砂をより一層乾いた色に染め上げていた。
デフェル荒野の北東部、アルハリの砂漠と人は呼ぶ。
小高い丘の上に登れば、荒涼とした大地を見下ろす巨大建築物が姿を現す。
ドラキーのラッキィ、そして相棒であるリルリラをサポートメンバーとして同伴し、私はここにやってきた。
敵は、ファラオ・カーメン。
魔法戦士とサポートメンバーによるピラミッド第9霊廟の突破が今回の目標である。
「さ、はりきって行こうか!」
やけにはしゃいだ様子で飛び跳ねるのはエルフのリルリラ。
妖精風の衣装を着こんだ彼女は、今回は本職の僧侶ではなく、踊り子としての参戦である。
このところ、彼女は僧侶の訓練そっちのけで踊りの練習に没頭している。おかげでなんとか実戦に投入できるだけの戦力に仕上がりつつある。
武器は扇の二刀流。短剣の方がポピュラーなのだが、「こっちの方が可愛い」の一言で彼女はこの道を選んだ。
この衣装も、わざわざ踊り子用に仕立てたものだ。
踊り子というより、学芸会という気もするが……まあ、いいだろう。
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さて、魔法戦士、踊り子、ドラキー、僧侶。この構成がピラミッドに通用するかどうか。私にとっても初の試みである。
燭台に赤黒い炎が宿り、砂漠の地下に冷たい風が吹き抜ける。
アラハ・カーメンの厳かな口上と共に、戦いは始まった。
私はまず、杖でサポートに徹する。
扇、ドラキーともに範囲攻撃はお手の物。私が無理に攻撃に回る必要はないだろう。ともかく、序盤は温存だ。
やがてファラオ・ヘッドが登場する。ここで私は雄叫びを上げて敵を怯ませ、ひとまず時間を稼ぐ。
リルリラはファラオの面の皮の分厚さを見て取ると素早く印を組み、扇の先から火の球を飛び出させた。メラゾーマの呪文だ。巨大な火球が黄金の鉄面皮を焼き砕く。ドラキーと組みさえすれば、踊り子の攻撃呪文も十分な威力となるのである。
ファラオは怒り狂ったが、私はこれを放置。我に返って仲間を呼ばれてはたまらない。そのまま援護を続け、杖装備を維持したまま撃退に成功する。
次に登場するのはファラオ・ニビスとヘルマ。秘宝の探求者からは、最大の鬼門と恐れられている鬼夫妻だ。
それだけに、私もここに戦術の焦点を絞っていた。
登場と同時にフォースブレイクを決める。さすがに面喰ったか、ファラオはのけぞった。
タイミングよくリルリラが扇をはためかせると、百花繚乱、花びらが舞い踊り、少なからぬダメージと共に呪文への耐性を下げる。
ここで私は温存していた魔法力を開放。マダンテの呪文を放つ。轟音と共に爆光が霊廟を包み、一気呵成に夫妻の片割れを葬る。ドラキーと組んだ時の魔法戦士にはこれがあるのだ。
魔法戦士がバイキルトで踊り子の力を高め、ドラキーがマダンテやメラゾーマを強化。踊り子の百花繚乱は自身のメラゾーマやマダンテ、ドラキーのドルモーアを底上げする。
今回、あえて踊り子を入れたのはこの連携を試してみたかったためだが、まず、上々と言うべきだろう。リルリラ、ラッキィと目を合わせ、笑みをかわす。
とはいえ……
ここまではあくまで前座。
夫妻の敗北を受け、地鳴りのような足音を響かせて大本命が入場する。
王の中の王、ファラオ・カーメン。満を持しての登場である。