なりきり冒険日誌~勇士たちの祈り(1)

渇いたのどを潤す、程よい酸味と甘み。さざ波の音と温かい太陽が隠し味。とこなつココナッツのジュースは美味い。そしてミューズ海岸の景色は心が和む。同じ砂地でも、あのゴブル砂漠とは天と地の差だ。
あまりの心地よさに体まで軽くなった気分だ。水を得た魚とはこのことである。
このまま良い気分に浸っていたいのだが、残念ながら私はバカンスに来ているわけではない。任務のことを思い出すと、せっかく軽くなった心がまた重くなってしまった。
王家の武具を求めて、最初に赴いたのはもちろん母国ヴェリナードだった。
折しも先日の一軒で暴君のことについて調べていたキンナーは王者の武具についても文献を調べ、暴君バサグランデと戦った勇士がそれを使っていたことまで確認できたらしい。
そしてさらなる調査のため、猫島に行かねばならないという。
……だが、調査隊員の誰もが二の足を踏んだ。それはそうだろう。
魚が大好物と公言してはばからない猫魔族の巣窟である。我々ウェディとはまさに犬猿の仲……いや、魚猫の仲か。ともかく、誰も行きたがらない。
結局、何度か彼らと交渉をしたことのある私が直接出向くことになった。
……セーリア様に聞いた方が早いと思うのだが。
あの方はまさにその時代の生き証人。おそらく、かつて暴君と戦った戦士リューデとキャット・バルバドについても顔見知りではなかろうか。
だがセーリア様は黙して語らず。口を開こうとしない。口癖のように「自分はこの時代に生きているはずのない存在」と語っていることを考えると、現代の事件は現代の我々が解決すべき、と思っているのかもしれない。
それにしても、アストルティアには古代から蘇った者が意外と多い。
セーリア様に、ドワーフのダオ皇子。そして世告げの姫たち。
彼らが一堂に会する機会があればかなりの見ものだと思うのだが、いつかそんな時が訪れるだろうか。
さて、猫島上陸。猫たちの視線が突き刺さる。敵意や警戒はともかくとして、たまに食欲が混ざっているのは気のせいだろうか。
暴君に対抗するためとはいえ、彼らと肩を並べて戦った戦士リューデの偉大さには頭が下がる。
幸い、ジュニアの一軒以来、ウェディと猫魔族の間にも不戦協定が交わされている。
当時の伝説に詳しいというジャガーメイジのニョラバルト氏も、快く話を聞かせてくれた。

話の途中で背後から乱入してきたベンガルクーンの一団には辟易したが、彼らにはギガスラッシュをお見舞いしておいた。
何事もなかったように話を続けるニョラバルト氏。猫にしておくには惜しい人物だ。
もう一つ付け加えれば、つい先ほどジャガーメイジ200匹討伐達成の報せをドラキーが持ってきたところだ。
氏の寛大さには種族の壁を超えて敬意を表すべきだろう。
あのキャット・リベリオがキャット・バルバドの子孫であることと彼の居場所を聞き出し、私は猫島を後にした。