なりきり冒険日誌~勇士たちの祈り(2)
永久の地下迷宮。こんなに早くこの場所をまた訪れるとは思わなかったが、暴君絡みの探索となればむしろ当然か。
探し出してきたキャット・リベリオと、後をつけてきたヒューザの手を借りて王者のマントが眠る隠し通路へ。
このまま勇士たちの子孫と共に伝説の場所へ……と思ったのだが、彼らはサッサと引き揚げてしまった。もう少し付き合ってもいいだろうに、全く淡白な連中だ。写真すら撮らせてくれない。
特にヒューザには色々と聞きたいことがある。主にアストルティア"ナイト"総選挙のことについて語ってほしかった。あいつめ、どんなオイシイ思いをしたのか。
わざわざ気をかけて後をつけてきた割に付き合いが悪い。シャイなのか。
まぁ、いいだろう。次の再会の時にでもじっくり聞かせてもらおう。
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道は開かれ、時の刻みし海溝へと我々は足を踏み入れる。
だがそこに広がる光景に私は愕然としていた。あまりに異常な光景に……ではなく、あまりに見慣れた光景に。
足元にはさらさらと水が流れ、洞窟を取り囲む壁は湿りを帯びつつも神秘的な輝きを放つ。魔法の迷宮、海神の大霊洞。幾度となく訪れた水の洞窟と瓜二つの風景がそこにあった。まるでコピーだ。ご丁寧に敵を倒さなければ先に進めないことまで同じだ。
確かに自分の選んだ仲間と共に魔法の迷宮に挑みたいと思ったことはあるが、こういう叶い方は想定外だった。
いや、逆に……。魔法の迷宮のコピーのそのものに見えるこの洞窟だが、もしや魔法の迷宮の方が、現世に存在する何らかの迷宮をコピーしたものなのだろうか。
もし他の迷宮にも同じように行けるのであれば、写真撮影にもってこいの場所ではある。
手慣れた作業で敵を倒しつつ、最深部へ。
そこに待ち受ける守護者は、またしても見覚えのある顔だった。
霧に包まれたまっ黒ボディ。レーンの村から初めて旅立ったあの頃を思い出す。別人であることは分かっているが、なにやら懐かしい気持ちだ。
ヒューザとも再会したことだし、全てが片付いたら一度、里帰りでもしてみようか。
守護者というだけあって、あくまで腕試し。殺意までは感じられない。この程度の試練ならば酒場で雇った仲間たちと共に、余裕を持って対処できる。
守護者を打ち倒し、王者のマントを手にする。いざ、凱旋というところで、私は扉に刻まれたレリーフに気づいた。
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不気味だ。
紋章の上にくっきりと浮き彫りになった女性の顔。
だがよく見ると、この髪型には見覚えがあるような気もしてくる。もしや、セーリア様……ではあるまいか。
場所が場所だけにあの方の顔が刻まれていても不思議ではない。……いや、それでも扉に顔は尋常のセンスではないが。
本国に報告がてら、そのことをそれとなく尋ねてみたが、やはり語らず。真実は時と海淵の彼方、か。
さて、女王陛下のお力によりマントを装着可能な状態に戻していただき、着用許可も得た。
さっそく身にまとってみたが、偶然にもノーブルグローブ、ブーツとの組み合わせがなかなか映える。
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ただ、いわくつきの品物だけあってメギトリスの仕立て屋でも色を変えることはできないらしい。
さらに上下一体式で扱いづらい上、これといった特別な力も見当たらない。防具としては最低限の機能しか持たないようだ。戦士リューデが暴君の攻撃を耐えきったという神秘の力は、もはや失われてしまったのだろうか。
全ての武具が揃ったとき、真の力を発揮する……という伝承・伝説によくある展開に期待したい。