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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2016-03-17 21:53:46.0 テーマ:その他

魔法戦士、牙の王に挑む(3/6)~なりきり日誌【牙王ソロ挑戦】

 牙王との戦いは続く。
 今回は正攻法でなく裏口からの攻略を試みる方針だ。

「で、吾輩たちの出番ってわけだニャ」

 猫が誇らしげに胸を張った。  呼び出したるメンバーは猫島出身の猫魔道、ニャルベルト。最近急成長中の闇縛り、シェイド。
 そしてアンルシア姫から預かって育てているドラゴンキッズのソーラドーラ。
 搦め手に関しては酒場で雇う冒険者よりも彼ら魔物の方が上手というのが私の評価である。なんといっても、使う技を制限できるのが大きい。

「まずは吾輩から行くのニャ!」

 気合と共に踊り出た一番手はニャルベルト。猫が高らかに雄叫びを上げると、七色の光が降り注ぐ。
 彼は自分の個性を最大限に生かすため、猫魔族独特の魔術、ニャルプンテに特化した訓練を行っている。敵対する者に様々な呪力をもたらす不可思議な術だ。
 眠りの力が上手く作用してくれれば、難攻不落の強敵さえ、無害な置物と化す。八岐大蛇や悪霊の神々をも完封した大技である。
 が、しかし。

「ニャー!! 吾輩の奥義を喰らうニャ! あのでっかい蛇と同じようにお前も」
「うるさい!」

 怒声と共に牙王は猫を弾き飛ばした。毬のように毛玉が跳ねる。
 気合は十分だが、雄叫びがうるさすぎたせいだろうか。敵を眠らせるには至らなかった。

「ニャー!! だったらメラガイアー覚え直して徹底的に焼いてやるのニャー!!」

 猫は尻尾を逆立てていきり立つ。悪いが、それをやるなら魔法使いを雇うだけでいい。あくまで冒険者にはできない戦い方を求めての起用である。
 続く二番手は今回がデビュー戦となる闇縛りのシェイド。
 風になびくフードの中、見えざる瞳が不気味な赤い光を宿す。
 牙王を下から覗き込むように身体を傾け、彼は静かにこう言った。

「……あ、よろしくお願いします」

 こう見えて、親切で礼儀正しい性格なのである。

「あ、こちらこそ」

 牙王もつられて頭を下げた。  何度召喚しても律儀に訓練に付き合ってくれることから薄々察してはいたが、この魔獣、存外に話の分かる性格である。
 いにしえの時代には、召喚者の忠実なしもべとして活躍していたに違いない。

 さて、今回の狙いは幻惑の術。
 闇縛りのシェイドは魔物たちの中で唯一の、幻術の使い手である。私は彼の特異な才能に着目し、この日まで幻惑のスペシャリストとして育ててきたつもりだ。
 牙王を幻に包むことができたなら、脅威は大きく軽減されるはずである。
 いざ開戦。独特の念動力で新品の斧を振り回し、闇縛りは牙王に立ち向かう。
 赤い眼光が獣を射抜き、不可思議な霧が白銀のたてがみにまとわりつく。
 が、しかし。

「……なんだこれは」

 鼻息一つで霧を晴らすと、牙王は意にも介さず突進を敢行。
 哀れ闇縛りはボロきれのように吹き飛ばされるのだった。
 どうやら幻術の通りは悪いらしい。元々暗い顔をしたシェイドがさらに暗く俯いた。
 だが、唯一無二の才能はいつか役に立つ。今回は相性が悪かったのだ。肩を……どこが肩だかわかりづらいが……ポンと叩き、慰めてやる。敗北は恥ではない。糧だ。
 最後は、最近ゴールドフィンガーを身に着けたドラゴンキッズのソーラドーラ。コドラゴラムを捨て、癒しと爪を極めてもらった。
 前の二人と違って搦め手を使わない正統派だが、ゴールドフィンガーを含む爪技とザオリクを両立できる点が冒険者達には無い個性である。

 僧侶2名を加えての真っ向勝負。白銀の獣が縦横無尽に蹂躙し、白い風を縫って黄金の仔竜が駆け抜ける。なかなかの戦いぶりと言えた。
 が、しかし。
 敵の守りが固すぎるのか、あるいは多芸さを重視しすぎたせいか、バイキルトの援護を受けてなお、タイガークローが決定的なダメージにならない。
 ザオリクの有用性ももう一つ。何故なら、真っ先に敵の攻撃に巻き込まれる位置に、彼自身がいるからだ。
 牙王に本気を出させるところまではいったものの、じりじりと競り負け、ついには倒される。
 意気消沈するドラゴンキッズ。勝ち誇るのはゴースネル。魔物達を活用しての攻略は、失敗に終わった。

 ニャルベルトらの顔には暗いものが漂うが、敗北も戦果のうち。私は一定の手ごたえを感じていた。
 幻惑を眠りの術は効果が薄い。僧侶二人では回復力不足。またも有用な情報を蓄える。
 敗北は勝利へと至る必然の道のり。膨大な選択肢から不要なものを排除し、有用なものを抜き出すために欠かせない試行錯誤の過程である。

 さて、次はどんな手で挑もうか。
 私は再び町の酒場の顔を出す。
 日も沈み、闇に包まれた街を照らす暖かな灯りと、酒の匂いが人々の足を引き寄せる。
 そしてアルコールと油の匂いが漂う猥雑な酒場の片隅に、油断ならぬ目つきで賽を振る、盗賊たちの姿があった。
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