なりきり冒険日誌~神代の春の歌(1)
ここはツスクルの村。ついこの間もヒメア殿の一件でやってきたばかりだが、王者の武具の在り処を表わすという古い歌を求めて再びやってきた。
現地にてあっさりと教えてもらったその歌を以下に記す。
神代過ぎ 春の桜よ 無為に咲く
清き風吹き 草木は目覚める
いわゆるリドルというやつか。面白い。ここはひとつ、カミハルムイのバショオ殿に届ける前に私が謎かけを解いて見せようではないか。
噛むと頭がよくなるというカムシカせんべいをかじりながら黒板の前でシンキングタイム。カムシカせんべいといってもカムシカの肉が入っているわけではないらしい。うぐいすパンのようなものか。
表面に描かれた妙に緻密なカムシカの絵が特徴だ。パリポリとした歯ごたえが実に快感。
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さて……まず上の句の神、春、無為からカミハルムイの名がつけられたことを考えると、下の句も頭の言葉をつなげれば……
キヨ クサ
ダメだ。これでは意味不明だ。
上の句と下の句をつなげることに意味があるのか、それとも秘匿されていた下の句だけに意味があるのか……
清き風、と言われて連想するのはアズランの風乗りのことだ。「草木」が王者の武具を暗喩しているとすれば、風乗りが何らかの儀式をすれば王者の武具が現れる……?
……あまりに強引すぎるか。
試しに全て文字から音に直してみよう
かみよすぎ
はるのさくらよ
むいにさく
きよきかぜふき
くさきはめざめる
うむむ……これをいくつかに区切って……
かみ よ すぎ
はる の さくらよ
むいにさく
きよ き かぜふき
く さきはめざめる
並び替えて……
かみ すぎよ
はる の さくらよ
むいにさく
きくよ き かぜふき
さきはめざめる
こ、これは……!
かみ
はる
むいにさく
すぎよ
さくらよ
のきくよ
かぜふき
きさきはめざめる
カミハルムイに咲く杉よ!桜よ!野菊よ!
風吹き妃は目覚める!
そうか……そういうことだったのか!
カミハルムイに杉と桜と野菊が咲くとき、風が吹いて妃は目を覚ます……!
つまり…………!
………。
……意味が分からん。
やはりダメだ。しょせん私とカムシカせんべいではここが限界らしい。
素直にバショオ殿のもとに届けるとしよう。