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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2016-06-25 17:45:55.0 テーマ:その他

もう一度ピーターパン~なりきり冒険日誌

 プクランド大陸の中央にあたるオルフェア高原を西に下ると、大風車塔を擁する風車の丘を経て、メギストリス領に到達する。
 今日、その街道をつぶさに観察すれば、乗合馬車のわだちが普段より深く刻まれていることに気づくだろう。
 メギストリスはプクランドの王都であり大陸政治の中心地である。また、冒険者たちには、多くの有用な施設を備えた主要拠点の一つとして知られている。
 だがこの日、人々が大挙してかの都に押し寄せたのは、政治的なやり取りのためでもなく、冒険活動のためでもなかった。

「うーん、満足まんぞく!」

 私の隣でエルフが大きく伸びをした。目を細めて満面の笑みを浮かべ、満ち足りた表情だ。
 それはそうだろう。私は大きくため息をついた。
 何しろ彼女は荷物運びを全て私に任せて、思う存分、ショッピングに励んだのだから。

 プクランド随一の人口を誇るメギストリスの都は、ファッションの都でもある。
 人気ブランドの新作がサービス価格で入荷されると聞いたエルフのリルリラは、私を引き連れ、この街にやってきた。
 彼女には日々の冒険で散々世話になっている。荷物持ちぐらいで借りを返せるなら、と軽い気持ちで引き受けたのだが……それが間違いの元だった。

 新作に向けて怒涛の勢いで押し寄せる淑女の群れ。リルリラは冒険中には決して見せることのない素早く巧みな身のこなしで人混みをかき分ける。一方、私は人の波に翻弄され、立っているのがやっとの有様だ。呆然と立ち尽くす私の手の上に、次々と積み重なる服の山。
 夏の日差しが強まりつつある今日この頃。凄腕のパラディンでさえ、あの熱量と質量の渦に飲まれれば押し流されるのみに違いない。
 ファッションと特売にかける女達の情熱は重々承知していたつもりだったが……どうも、認識が二回りほど甘かったらしい。
 ちなみに、同じ任務に狩り出された猫魔道のニャルベルトは既に地面を舐めている。
 疲労困憊の我々をよそに、リルリラは早速、新品のドレスを着てご満悦の様子である。
 シラナミブランドの新作ドレス。植物を思わせる独特の形状のスカートと、ひときわ目立つ背中の飾り翅。妖精をモチーフにしたこのデザインは、オーナーであるシラナミ氏自らの発案だそうだ。かなりの人気作らしく、早くも街はこの衣装を着た女性であふれている。

「まあ、スカートが長くて、妖精にしてはちょっと活動的じゃないかなって気もするけど。そこはドレスだしね」

 とはリルリラの談である。確かに、帯を高い位置で結んだパーティドレスがベースとなっているようで、跳んだり跳ねたりにはやや不向きだろうか。
 彼女は昔から妖精風の衣装に拘りを持っており、自作したこともある程である。
 勿論、素人のハンドメイドと一流ブランドの自信作では天と地ほどの差があるのだが……彼女自身はそう思っていないようだ。
 わざわざ持ち込んだらしき自作衣装と着比べてはあれこれとポーズをとってみせる。 「ねえ、そこの鳥さんはどっちがいいと思う?」

 同意を求められたデスパロットも困惑気味だ。
 どうも、好みの妖精風衣装が手に入り、喜んでいたのもつかの間、今度は対抗心が芽生えてきたらしい。

「うーん、私がシラナミさんに一言、アドバイスしてあげられたらなあ」

 ブルベリーノは何か言いたげにシナリと蔦を振り下ろした。  シラナミ氏といえばシラナミ財団の若き総帥である。一代で財を築いた傑物だが、成り上がり者にありがちな性急かつ自己中心的な性格が災いしてか、評判はあまりよろしくない。
 婚約者に手ひどい振られ方をして、公衆の面前で道化を演じる羽目になったのが、ちょうど一年ほど前のことだったか。
 財界の有力者やエルトナの貴族階級を招いての式典での事件だけに、財団自体も相当な打撃を受けたはずだが、しぶとく生き残ってファッション界に食品界にと、手広く活動を続けているようだ。
 まあ、彼が恥をかいたからといって大人しく引っ込むような奥ゆかしい性格の持ち主であれば、あんな恥はかかずに済んだだろうし、そもそも成り上がることも無かっただろう。

「そうそう、その話なんだけど」

 と、エルフがくるりと身を翻した。顔には満面の笑み……いや、にやけ面と言うべきか。

「そんなシラナミさんにも、ついにいいヒトが現れたんだって!」

 クスクスと口を押えて妖精は笑う。なぜそんなに嬉しそうなのか。
 他人の恋愛話に首を突っ込む時、彼女の瞳はキラキラと輝く。

「新作ドレスのデザインにも、そのことが関係しててね……」

 どうやら、話が長くなりそうだ。
 じわりとした夜風が雲を引き連れ、流れ始めた。
 私は地面に伸びたニャルベルトを起こすと手近な料理屋に席をとり、昼間の疲れを癒しつつ妖精の語る物語に耳を傾けることにした。
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