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絡み合う蛇のような二重螺旋の階段が、下へ下へと伸びていく。
ここは冥闇の聖塔。地神ワギの手になる超文明の遺産である。
闇の領界を探索する我々は、解放者殿に遅れること一巡り、ようやく最後の未踏区域であるこの塔に脚を踏み入れた。
壁には機械的な光を放つパネルが敷き詰められ、時折、光の環が階段の縁を通り過ぎる。楽園と呼ばれる空中都市の姿から想像した通り、超未来的な光景である。
だが、その一方で、探索者を待ち受ける仕掛けのほとんどは、かがり火と松明、そして探索者自身の足を最大限に使う、原始的なものだった。
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硬質な空気漂う機械仕掛けの塔に、せわしない足音が響く。色とりどりに染まる松明の光に、我々自身の影が踊る。
超文明の塔に、松明を掲げて走り回る冒険者たちの姿は実に不釣り合いで、私も首をかしげざるを得ない。
だが、火は文明の象徴である。
高度に発展した機械文明の中で、あえて文明の原点に返ること。それがワギの思し召しというわけだろうか。
……考えすぎのような気もする。
ま、神の御心がどこにあろうと、我々のやることは同じだ。灯火台に火をくべるごとに一つ、また一つと扉が開いていった。
こうして我々は聖塔を踏破していった。
途中で発見した石碑からは、闇の領界に関する重要な情報を得ることができた。
竜族の過去と罪業、そして与えられた処置。これらはヴェリナードへの報告書に念入りに記録しておくべきだろう。
他に特筆すべき点としては、宝物庫の存在が挙げられるだろうか。
この塔はあくまで試練のために造られたもので、宝物庫を設置する意味は無い筈なのだが、そこはさすが強欲を第二の天性とするドワーフの神といったところか。
残念ながら我々が訪れた時には、既に何者かによって荒らされた後だったらしく、空になった宝箱が散乱するのみであった。
誰の仕業なのかは不明だが、聖塔の宝物庫を暴くとは、まさに神をも畏れぬ所業である。
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塔の探索も一通り終わろうというところで、我々は一旦、楽園に戻ることになった。
最後の部屋に入るには、一度外に出て別の試練を受けねばならないらしいのだ。
さて、どんな試練が待っているのやら。また松明を持って走り回るのか?
これまでの探索が順調だったせいもあり、気楽な気持ちで外に出た私は、そこで意外な試練と遭遇することになる。
私は知ることになった。
これまで駆け抜けてきた機械塔の仕掛けなど、ほんの小手調べに過ぎなかったことを。
そして地神ワギの御心を。
人工の輝きに照らし出された空中都市を、ヘックス模様の空が包む。
肌を刺すような、冷たい風が吹いていた。