誰かが言っていた。
プクリポに似合わない服など存在しない、と。

海水パンツにシルクハット。
あまりにアバンギャルドなこのファッションに何の違和感も抱かせないプクリポという種族を、オシャレ万能生物と名付けたい。
かつて冒険者の修業場として一世を風靡したキュララナ海岸も、今やすっかり期間限定の観光地。今年はサーカス団までやってきた。夏祭りは、さぞ盛況だったことだろう。
……ところでこの御仁、メギストリスの国王代理を務めているはずなのだが……。どうやらプクランドでは国王にも夏休みが認められるらしい。羨ましい話である。
なお、魔法戦士団に夏休みという言葉は無い。私など、この夏はナドラガンド詰めだった。ようやくウェナに戻ってきたかと思えば、海水浴場は閉鎖寸前という有様である。
もし氏の休暇中にメギストリス城を訪れたら、どんな光景が見られるのだろう。影武者でも残してきたのだろうか。
プクリポにとって影武者の一人や二人、用意するのは容易いなことに違いない。何ならぬいぐるみを置いておくだけでも遠目には誤魔化せるのだから。
果たして、玉座の間に広がる光景とは……?
確かめようにも、つい先日、彼は休暇を終え、メギストリスに戻っていったところである。もう少し早く気付いていれば、面白いものが見られたかもしれないのだが。
惜しいことをした。閉鎖されたビーチに打ち寄せる波の音を聞きながら、私は己の迂闊さを悔やむのだった。