潮騒に混ざった雨音がざあざあと、遺跡の街を無慈悲に濡らす。
「雨だな」
「雨だニャ」
「誰なんだ、新年早々に釣りをやろうなんて言い出したのは」
「誰だっけニャー」
とぼけても、発案者は私の目の前にいる。
ニャルベルトの発案で、新年の運試しとばかりに釣りの名所、リンジャハル海岸にやってきた我々を待っていたのは暗雲立ち込める空と雨に濁った海だった。
せっかく奮発して良い釣り道具をそろえたというのに、運試しの結果は釣る前からわかってしまったらしい。
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「そんニャ弱気でどうするんニャ! こういう天気だからこそ、普段はいニャい魚が海辺まで上がってきたりするもんニャ!」
と、背中を押されてとりあえず釣り糸を垂らす。クラゲぐらいは浮かんでくるかもしれないが……果たして何が釣れるやら。リルリラは早くも帰りたがっている様子である。
漁村レーンの出身でありながら、私は釣りがあまり得意ではない。まだ通常サイズ50種類にも届いていないし、段位も15止まりである。釣り老師もそろそろ私の顔を忘れた頃だろう。
とりあえず特別交換員からSジェネラルカードぐらいは貰っておこう、と思っても手元に5000枚のコインすらない。
せめて不足のコイン分の釣果ぐらいは持ち帰りたいところなのだが……
雨も激しくなってきた。やはり日を改めよう。
打ち付ける横殴り雨に私が目をつぶった、その瞬間のことである。
波に翻弄されていた浮きが、ガブリと水に飲み込まれた。
続いて竿の先がピンと突っ張り、そのまま波にのまれようとする。必死で引き上げる。重い! しなった竿がプルプルと震え始めた。
「ニャんだ!?」
「来たの?」
「手伝え、二人とも!」
海に引きずり込まれそうな体に一人と一匹がしがみつく。重石としてはどちらも軽いが、この際、贅沢は言うまい。
ピンと張ったテグスが波間を自在に駆け巡る。まだ見ぬ巨大な影を水の裏側に想像し、私は身震いした。
悪戦苦闘。
猫がエルフを引っ張って、エルフがウェディを引っ張って、ウェディが竿を引っ張って、竿が魚を引っ張って。
いつの間にか雨も上がり、暗雲が青空に変わった頃、大量の波しぶきと共に巨大な魚影が空を舞った。
石橋に叩きつけられたのは、ビッグサイズのハンマーヘッド、シュモクザメだった。
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世の釣り人達にとっては、今や珍しい魚でもないが、私には初の快挙である。
空も晴れて、運試しとしては上々と言うべきではないか。
「ま、そこでキングサイズといかニャいのがお前らしいけどニャ」
「めでたさも 中くらいなり ナントヤラ」
「茶々を入れるんじゃあない」
ま、誰かと比べ始めればキリがない。中くらいのめでたさで私は十分。
とりあえずは不足分のコインを納め、Sジェネラルカードを貰ってくるとしよう。
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と、いうわけで
あけましておめでとうございます。
今年も妙な日誌ばかり書いていくと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします!