なりきり冒険日誌~ぬいぐるみを求めて(1)
諸国調査の任を得た私が最初に訪れたのは、ガートラントだった。
多少の異論はあるだそうが、オーグリードはアストルティア経済の中心。現況調査として最初に見ておきたい国である。
魔法戦士の身分は隠しているため、国賓扱いとはいかなかったが、幸いにも道すがら身に着けた旅芸人の経験が活きた。軽業の一つも見せれば、ちょっとした催しの彩として場内に顔を出すことも許されるし、気前よく食事もふるまわれる。オーグリード料理は野趣にあふれる肉料理が中心で、海育ちの私には少々思い食事だったが、味は絶品である。旅の始まりとしては上々と言えよう。
さて、そんな中、幸運にも拝謁の機会を得たのが写真の女性。クロズナー王の御息女ゼラリム姫である。
オーガと言えば豪放な印象ばかりが先に立つが、さすがに王家の気品か、あるいは生まれつき病弱な薄幸の身の上がそうさせるのか、姫の物腰にはたおやかで可憐なものがあった。
その王女にひそかに頼みごとをされれば、私も引き受けざるを得ない。それが城下にぬいぐるみを買いに行くという文字通りのお使いであったとしても、だ。
もっとも、肝心のぬいぐるみ代を持たせずにお使いを頼む世間ずれしたところはさすがにお嬢様育ちといったところだろうか。
ともあれ、城下町のぬいぐるみ屋に赴いて買い物をしてくればよい。実に簡単な依頼のはずだった。