なりきり冒険日誌~ぬいぐるみを求めて(2)
ぬいぐるみを求めて幾星霜。私はケキ神人形の原産地、オルフェア大陸はピィピの宿までやってきた。
なぜこんなことになったのか、仔細は省く。すべてはスピンドル兵士長の下らない思い込みによるものである。
ともかく、写真の男が件のぬいぐるみを手掛けたピルクノという男だ。彼から作りかけのぬいぐるみを譲ってもらった。これを兵士長に見せてやればぬいぐるみ屋の疑いは晴れ、私の任務も達成できるというものだ。
それにしてもこのピルクノという男には驚かされる。オルフェアサーカスのケキ神像をモデルにぬいぐるみを作るまではともかくとして、それを全国に広め、キャラクタービジネスなる商品展開を描くのだから、見た目は小さいがスケールの大きい男である。志ある商人たちが経済に及ぼす影響は、王侯貴族のそれをはるかに上回ることもある。
直売店はガートラントだけのようだが、アズランでも私はこの人形を持った少女を見たことがある。着実に勢力を広げているとみてよいだろう。裁縫職人の端くれとして、見習いたいものだ。