なおも探索は続く
ポイントG4
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強固な城壁が街の東側を覆っていた。
杭を打たれた門は固く閉ざされ、住む者がいなくなった今もこの街を守り続けている。
城壁にも目立った傷は無く、少なくとも魔物達はこの壁の向こうから襲来したわけではなさそうだ。
ぞくりと冷たい風が私の背びれを揺らした。
街のもう一つの出入り口は、我々の入ってきた南門である。その向こうには、野生の魔獣はともかくとして、組織立って行動する魔物の棲み処らしきものは存在しなかった。あるのは延々と広がる荒野、神の造った聖なる塔と、円盤遺跡のみだ。
では、この街を襲った魔物は一体どこからやってきたのだろう。
空から舞い降りたとでもいうのか。
それとも。
あの円盤遺跡の彼方から、襲来したとでもいうのだろうか。
遺跡を占拠していたナドラガ教団。彼らに対抗すべく組織された疾風の騎士団。有り得べからざる想像が私の肌を震わせた。
気が付けば、いつの間にか赤黒い影が私を覆っていた。それが想像の産物でなく、目の前に広がる光景だと理解した時、私は剣に手をかけた。
ここは魔物に占拠された街。物思いにふけるのは後にしよう。
魔の影が両手を広げ、私に襲い掛かった。
ポイントF7
魔物を退け、再び城壁を調べる。
南東に設置された小さな通用門は今でも使えそうだった。立札には掠れた文字で、こう書かれていた。
"この先、天ツ風の原"
その独特のネーミングからしても、ここがエルドナ神の治める世界であることは間違いなさそうである。
一通りの探索を終えた我々は、ここで先に進むべきか否かを話し合った。
消えた住民、そして教会に出入りする人物。この街にはまだ調べるべきことがある。
だが、魔物の闊歩する街にこれ以上、長居するのも危険である。
我々は悩んだ末、夕刻までの時間を教会で過ごし、ここに出入りする何者かが訪れるのを待った。
雷鳴が時を刻む。魔物たちの足音が秒針代わり。恐怖の一刻、期待の一刻、失意の一刻、過ぎ去りて。
待ち人来たらず。
我々は腰を上げた。
元来、冒険者は行動の生き物である。
未知の領域が目の前に広がっていて、じっと待ち続けることのできる冒険者がいるだろうか?
通用門が軽い音を立てて扉を開く。
我々は天ツ風の原を目指し、町を後にした。