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小高くそびえた丘の上、その男は稲光を背に一人、佇んでいた。
朽ちかけた長衣を業風が揺らすと、細く枯れ果てた手足がその隙間から覗く。
頭にかぶった威厳ある帽子は、彼はかつて神職につき、しかもかなり高い地位を得ていたことを物語っていた。
だが彼がいかなる賢者だったとしても、我々が彼に教えを乞うのは困難を極めるに違いない。
かつて崇高なる神の教えを伝えたその口は、言葉にもならぬ呪詛の呻きを漏らしていた。
かつて真理を見つめた瞳は既に腐れ落ち、暗い光を宿す双眸が空しく虚空を見つめていた。
アンデッド・モンスターは生者の臭いに敏感である。
ゆっくりと我々の方を向き直ると、彼は生前の威厳をそのままに杖を振りかざし、死と破壊をまき散らし始めた。
我々にできるのは、粛々と彼を葬ってやることだけだった。
骨と砕けた知性の残骸をあさると、その殆どは役に立たなかったが、唯一、彼が手にしていた書物には読み解ける部分が残っていた。
この高原について記した書物らしく、神獣の森、烈風の岬、そしてナドラガの祠といった地名がそこには記されていた。
我々は自作の地図と照らし合わせてそこに地名を書き足し、烈風の岬を次の目的地に定めた。
僧侶のリルリラは亡きがらを簡易的に埋葬すると、貴重な情報を与えてくれた彼の冥福を神に祈った。
エルドナ神に慈悲の心があるなら、その願いは聞き届けられるだろう。
天を見上げると、空を稲妻が走った。
毒の風が吹いていた。