既にヴェリナードへの報告書にして十数ページ分の情報を我々は手にしていたが、それさえも、この日、我々が出会ったものの半分にすぎなかった。
残る半分は、ちょうど今しがた、会議室の扉をくぐったところだった。
……と、ドラゴンキッズのルナルドーラが飛び出すように駆け寄った。ソーラドーラも一瞬、翼を羽ばたかせ……少し躊躇うように身を丸めた。
金髪が風に揺れる。扉から現れた少女は、以前と変わらぬ気品と共にレジスタンスらしい野性味をまとい、また一段と成長したように見えた。少女はルナルドーラを抱きしめると、仔竜のフルネームを叫びながら再会を喜んだ。
ルナル・グラン・ゼ・ドラゴーン三世、と。
そしてもう一方のドラゴンキッズ、ソーラ・グラン・ゼ・ドラゴーン三世に向かって両手を広げた。
彼はまたも躊躇い、少し俯いた。
私が背中を押してやると、ようやく少女の元に歩み寄り、ゆっくりと前脚を広げた。
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ソーラドーラとルナルドーラ。この二匹の本当の主人は私でもリルリラでもない。
我々がグランゼドーラの姫君から預かって育てているドラゴンキッズなのである。
彼らの旅の目的は、連れ去られた姫君の奪還。その目的は、意外にもあっさりと達成されてしまったらしい。
はしゃぐルナルドーラとは対照的に、どこか浮かない表情のソーラドーラに、姫は訝しげな視線を向けた。
その視線から逃げるように目をそらした仔竜の瞳は、やがて助けを求めるよう私へと向けられた。
私は咳払いして、簡潔にこれまでの経緯を説明した。
グレイトドラゴン、そして祭壇へと向かった巨竜。ソーラドーラが立て続けに竜たちの戦いに敗北したことを。
「恥じているのです、姫様。貴女に仕える竜として、ふさわしくないと」
「そう……」
王女は傷心を慮るように目をつぶり、ソーラドーラの頭にそっと触れた。
そしてその目が開かれた時、彼女は勇者の瞳で竜を見つめていた。
力強い眼光。信念と慈愛。言葉は無かった。意思だけがあった。
勇者姫は無敗の英雄などではない。何度も敗北を味わい、誰かに救われ、そのたびに歯を食いしばって立ち上がってきた、不屈の戦士である。
その強き瞳が仔竜を射抜く。
ソーラドーラは彼女の騎竜たりうるか?
それは、敗北を乗り越えられるかどうかにかかっている。
「ルナは前々、気にしてないんだけどね」
リルリラがルナルドーラの背中を撫でた。王女は二匹を見比べて、くすりと笑った。
「育て親の違いかしら」
「負けず嫌いなヒトがいるからね~」
違いない、とヒューザも同意した。
さて、誰のことだろうな?
「今弱いなら、これから強くなればいいって、ボクはそう思います」
と、生真面目な台詞を口にしたのは、王女に続いて扉をくぐった小さな人影だった。彼もまたやんごとなき身分にある人物である。
私は跪き、王子を迎えた。
神々の器たる人物が、ここに半数までそろったこととなる。