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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2017-08-22 23:33:33.0 テーマ:その他

ナドラガンドの決戦(24)~なりきり冒険日誌【ストーリーネタバレ注意】

【注:ver3.5後期のストーリーネタバレを含みます】
                                  
第八話「邪悪なるもの」後編
 白い灰が私の前を横切った。満身創痍の二人の竜族の肩に、数えきれない灰の欠片が降り積もっていた。
「全ては計算通り、か」
 躊躇うようなしばしの間の後に、無感情な声が続いた。
「……背負うべき罪が一つ増えた。それだけのこと」 
 ロマニはそう呟いて身体の力を緩めた。途端によろめく。ドマノは相棒の肩を支えた。その彼もまた、立っているのが精いっぱいだった。

 ナダイアが倒され、エステラが道を示した時、彼らは"邪悪なる意志"たる自分たちの野望が潰えたことを理解したに違いない。時代の流れが、"解放者"とエステラを選んだのだということを。
 そして彼らは選ばれざる者の最後のけじめとして、己の立場と使命に従い、果たすべき役割を果たしたのである。

 ナダイアは言った。誰もが恐れる"悪"の存在こそが、人を一定の方向へと導くのだと。
 邪悪なる意志とは、竜族解放のための必要悪。
 彼らが支配者として悪の限りを尽くしたことで、流されるだけだった民衆は自ら立ち上がり、神の名の元の支配から自らを解放した。分裂しかけていた教団もトビアスの元に団結した。膿を出し尽くし、彼らは生まれ変わった。
 彼らはナダイアに殉じたのだ。最後まで"邪悪なる意志"を演じ続けたのだ。万人の敵として。倒されるべき悪役として。
 この戦いを、新たなる時代の礎とするために。
「まるで殉教、だな」
「そんな立派なものではないさ。我々とて、最初から敗北を望んでいたわけではない」
 ロマニは力なく首を振った。
「民衆があのまま我々に従うのなら、それでよかった。ナドラガ神の名のもとに民衆を支配し、その力をもってアストルティアの神々に対抗……。何もかもが上手くいくような気もした。欲もあった。全て、かき消された」
 ロマニは虚無的な笑みを浮かべると、痙攣を起こしたように震えた。
「さぞ滑稽に見えような」
 自嘲的にドマノは言った。
「笑わんよ」
 私は再度、首を振った。
 邪悪なる意志の尖兵として彼らが重ねてきた悪行を思えば、安易な同情は禁物である。ましてや今も、理由はどうあれ彼らは多くの犠牲を強要し、破壊の限りを尽くしたのだ。
 怒るべきだ。理性がそう訴えかける。
 だが、今私の目の前にあるのは、悲しいまでに愚直な男たちの姿だった。他の道を選べなかった男たちの姿だった。
 私は瞳を閉じ、親指で背後を指し示した。
「この先に市民兵が集結している。練度は低いが士気は高く、数も多い」
 幕を引くには十分な相手だ。
「……感謝する」
 ロマニは竜族式の敬礼を返すと、私の隣を通り過ぎていった。ドマノもそれに続く。迷いなき足取りだった。
 私は瓦礫に腰掛けたまま、大きく息をはいた。
 白い灰が音も無く降り注いでいた。

 やがて彼らの向かった方向から民衆の悲鳴が聞こえ、それが怒りの咆哮へと変わった。
 ほんのわずかな、戦いの音。
 そして立て続けに二つの断末魔が上がった。

 時を同じくして、空に震動が走った。
 後で知ったところによれば、丁度、"神墟"ナドラグラムの決戦に赴いた"解放者"が、全ての元凶を打ち倒した時刻と重なっていたそうである。

 この瞬間、竜族の歴史は新たな一歩を踏み出した。
 あれゆる歴史書がこの瞬間を刻みつけるだろう。解放者と、竜族の栄光を。
 打ち倒された、忌むべき"邪悪"の名と共に。
「邪悪なる意志、か」
 降り注ぐ灰が、戦火の残り香を真っ白く包み隠していった。
 私は手元の記録書に彼らの名前を書き記した。歴史の語る邪悪の名前を。
 そして歴史が決して語らない記憶を、私自身の中にしっかりと刻み込んだ。
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