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古代オルセコ闘技場。かつてオルセコの王都だったというこの巨大建造物も主を失って久しい。
威圧的な闘技者の像も半ば崩れ、鬼人の侵入すら阻んだ強固な城壁は、時間という名の侵略者の手により脆くも打ち砕かれていた。
宝物庫を守るアニメイテッド・オブジェクト……命を吹き込まれた守護者像だけが、主のない城を守り続けているのが、なんとももの悲しい。嗚呼、心持たぬが故に、お前は私の心を騒がすのか。
「それはそれとして宝は頂いておこう」
それは冒険者としてのマナーというものである。
仲間たちと共に得物を抜き、間合いを取り、武器を構えつつ慎重に回り込み、接近し、肉薄し……!!
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「……守る気はあるのか?」
「……」
守護像は一瞬反応したが、素知らぬ顔で像のふりを貫いた。彼我の戦力差を鑑みれば妥当な判断ではある。案外、この守護像が健在である理由はそっちか?
……まあ、そういうわけで、これといった邪魔も入ることなく、我々は探索を進めることができた。
前々から知られている遺跡だけに、すでに探索しつくされているだろうと、あまり期待もせずに調査を開始したのだが……戦果は予想をはるかに上回っていた。
「こ、これはオルセコ時代の大臣がつけた日記ですよ……歴史資料としては第一級の価値があります!」
エリガンが声を震わせた。ガートラントのオーガたちは歴史調査にあまり熱心でなかったのか、あるいは因縁のある場所だけにあまり近寄りたくなかったのか。この遺跡には未発見の遺物が大量に眠っていた。これを世間に発表するだけでエリガンは有名人になれるだろう。
彼はその場で古代文字を読み解き、失われた物語を現代によみがえらせた。
水源を巡った隣国との戦争。悪鬼の出現と王の死。そして、二人の王子。
「……俺の先祖にあたる人物だ」