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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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写真コンテスト

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ミラージュの冒険日誌

2018-10-12 23:59:17.0 テーマ:イベント

サーキットの魚(3/3)~なりきり冒険日誌

 ズラリと並んだドルボード。レトロな旧式モデルから未来的な円盤型まで、まるでドルボードの展覧会だ。
 だがここが博物館でない証拠に、それらは全て熱を持ち、振動し、スタートの時を今か今かと待ち続けていた。
 タイムを競い、賞品を狙うレーサーたちの眼、眼、眼……。それはどんなドルボードのライトよりもギラギラと輝き、赤土を熱く染める。
 ドルボードレースグランプリ。
 今日は私も温暖化に一役買うことになりそうだ。

 大まかなレースプランはシミュレート済み。欲張らずに行けば理論上、規定タイムは十分に狙えるはずである。
 ……理論上は。

 ここはグレン、野生の大地。机上の空論が大手を振って歩けるほど甘く無かった。

 ある時は……

 全ての冒険者が恐れる、"赤い悪魔"に往く手を遮られ……

「ども、スライムベスです」
「……今日ほどお前を恐ろしい思ったことはない」


 またある時は……

 わずかな段差に足を取られて貴重なブーストを無駄にし……

「バジエド君、この段差、埋めておいてくれないか」
「無茶言わんで下さい」


 そしてまたある時は……

 シミュレートに夢中になってドルボードに乗り忘れたりもした。

「この脚のみで、大陸を横断する!」
「再起不能になる前にさっさとリタイヤするニャ!」

 猫にどやされ、再エントリーの日々……


「……こいつはなかなかの逸材っぷりですよっ!」

 ……今、何か聞こえた様な……?
 いや、気にすまい!

 ともかく、数々のトラブルを乗り越え、リタイヤすること幾星霜。
 私はようやく幸運に恵まれ、中堅集団に喰いついたままゲルト海峡を突破した。
 あとはコーナーの少ない広大なランドンフットと、短距離コースのザマ峠が残るのみ。
 正面から当たる風が高揚感を後押しする。
 今度こそは、いける……!

 何かが私の耳元で囁いたのは、その時だった。

『全く、世話が焼けるぜ……』

 それは聞いたことのない声……いや、違う。聞きなれた……何だ?

『何か忘れてるんじゃあないか?』

 声は唐突に途切れた。走行音と風の声。流れていく景色だけがそこにある。レースは続行中。視界は良好。コース良し。魔物なし。全て順調。
 だが何かが。何かがおかしい。もっと根源的な、もっと致命的な何かが……
 視界の端。いや真正面。違和感の源はそこにあった。
 気づくや否や、心臓が竦む。ドルボードの駆動熱が一気に冷え込んだかのような悪寒が私の背筋を走り抜けた。

 ドルセリン残量、極小!

 迂闊にもほどがある! 満タンだった筈の燃料は、リタイアを繰り返すうちに少しずつ削られていたのだ。
 唇を噛みしめる。ランドンも半ば走破。ザマは短距離走!
 運が良ければ、このままいけるか……? 一瞬、安易な考えが頭をもたげた。
 首を振る! 否だ! 幸運の女神は、今ごろ先頭集団につきっきりだろう。
 ならば答えは一つ。
 前方確認。直線コース。思い切って右手を離し、道具袋をまさぐる。空中給油ならぬ走行中給油である。

 予備燃料を探り当てる。ぐらりと震動。やや右によれたか? 片手で微調整……左によれる!
 なんとかドルセリンを引っ張り出し、タンクのフタを乱暴に開く。予備燃料、スピードチャージ!
 ……と、視界に影がかぶさる。前方に岩!
 体重を傾ける! 斜めに岩肌を擦りながら機体は疾走する。続けて崖だ! バランスを崩しつつ大きく跳ねる! スタビライザー!
 ランドンフットの雄大な景色が流線となって背後に流れていく。反重力ビークルの制御装置が目まぐるしく計算を繰り返し、最適な姿勢を導き出す。私はただ抗うのみ。
 着地!
 ランドンの大地と反重力嵐が干渉し、砂埃を上げた。視界を覆う砂塵……それが一瞬で背後に消える。ブーストオン!
 スピードの後押しがバランスを補い、走行姿勢を安定させる。ゆっくりと、慎重に傾きを消していき……私はようやく汗をぬぐった。
 気付けば機体は既にランドンを超えていた。空にはゴールを示す黒い狼煙。
 あと一息。私は改めてグリップを握りしめた。

 ……こうして

「本当にギリギリだニャー」

 レースクイーン代わりに出迎えた猫魔道に茶化されつつ、私は賞品を手に入れた。タイム04:59。上を見ればきりがないが、今のところ精一杯といった所だ。

「それにしても、あの声は何だったんだろうな」

 ガタラ。メンメにメンテナンスを頼みつつ呟く。
 燃料枯渇を教えてくれた、あの不思議な声。あれがなければと思うとゾッとする。

「さあ、何だったのかしら」

 どこか嬉しそうにメンメは微笑み。ドルボードを優しく撫でた。
 無骨な機体はガタラのくすんだ太陽に照らされ、そっけない輝きを放った。
 デコリーは口に手を当てて笑っていた。
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