なりきり冒険日誌~動き出した時間(1)
オーグリード、エルトナと廻ったからには、次はドワチャッカかプクランドなのだが、しばらく人形にはかかわりたくない気持ちなのでドワチャッカにやってきた。
久方ぶりにガラクタ屋敷に顔を出してみると、やはり汚い。美意識というものがまるで感じられない。掃除という概念は彼らにはないようだ。
そしてここでも、奇妙な出会いが待っていた。古代遺物の中から現れた少年。彼は古代ガテリア皇国の皇子だという。
……これが美しい皇女であればロマンチックなのだが、ドワーフの皇子ではイマイチ盛り上がらない。誰が得をするのだろう。
しかし、学術的には非常に興味がそそられる話だ。
古代帝国との争い、暗躍する軍師。そして皇子を冷凍冬眠させた巨人兵の恐るべきテクノロジー。
そういえば以前もダストンは古代遺物を発見してきた。見るものが見れば、ガラクタ屋敷は宝の山かもしれない。もっとも、ガラクタにしか興味のないダストンだからこそ、そうした遺物が寄ってくるという気もするが。
皇子は断片的にしか過去を語ろうとせず、皇国を壊滅に追いやった仇敵を探すと言い出した。
もはや名前しか残っていない古代帝国の軍師が現代に生き残っているとは、とても考えられないのだが……。しかし目の前に実例があるのだから頭ごなしに否定はできない。
ウルベア古代遺跡、グルグ地下道と連れまわされたが、やはり雲をつかむような話だ。光陰矢の如し。軍師が根城にしていたというグルグ地下道など、今やケダモンの根城である。槍を使った修行では私も世話になったものだ。
煮詰まっていた我々のもとに、懐かしい顔が現れた。
ポワトリン、もといチリ。くしくも現代と古代の王家の者が対面することになった。そしてどちらの王も、国を守るため子を捨てた。
王たるものの業と責務。王族として生まれた子の宿命。
嗚呼、千年の時が流れても、人はそのカルマから逃れることはできないのか……。
……等と物思いにふけってみたが、今はそれどころではないらしい。以下、チリが報せてきた事態を記す。
1.カルサドラの火口に魔物が集まっており、ドルワーム王国が危険
2.火口に行くには古代皇国の転送装置が必要
3.転送装置を動かすには起動装置が必要
4.起動装置を作るには特別な材料が必要
5.材料はエルトナとオーグリードにそれぞれ棲む魔物が持っている。
………。
何故アストルティア世界では、何をやるにも回りくどい寄り道が必要なのだろう。これも世界を包む魔障の影響だとしたら、事態は深刻である。せめてレンダーシアの霧が晴れる頃にはマシになっていてもらいたいものだ。
私はまたもドルボードを待ち遠しく思うのだった。