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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

ライブカメラ画像

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ミラージュの冒険日誌

2022-01-16 20:00:33.0 テーマ:その他

海賊と冬の陽炎(9)~なりきり冒険日誌【※海賊クエストに関するネタバレあり】

 洞窟を抜けると、そこは開けた地下空洞だった。
 天井に並ぶ尖った岩が定期的に水滴を落とし、地下水脈から流れる湿った風が、私の耳ヒレをじわりと撫でる。
 そして空洞内に設けられた桟橋の先には、古ぼけたマストが墓標のように並んでいた。
「まるで船の墓場だニャ」

 と、ニャルベルトが呟いた。
 言い得て妙、と言えるかどうか。

 ここはギルザッド地方北部。古の海賊たちがアジトとして使用していた地底基地である。かつてはオーグリード近海を荒らしまわる海賊船の母港として、密かに栄えていたに違いない。
 だが内輪揉めか、時の権力による摘発か。それとも魔物の襲撃か……海賊たちは船をアジトに残したまま、帰らぬ人となった。
 取り残された船たちは、もはや二度と海に出ることもなく、冷たい風の吹く地の底で、緩慢な滅びの道を辿ることとなったのである。

 吹き抜ける風とマストが呼び合うと、泣くような声を上げる。ぽつりぽつりと水滴が流れ落ちる。
 ……だが、今の私には、彼らの泣き言に耳を貸している暇はなかった。

 マドロックから渡された地図の写しを頼りに、我々はこの洞窟へとたどり着いた。
 財宝まであと少し。本来ならば興奮で胸が鳴り、心が躍るシチュエーションだろう。
 私の心は重い。そして胸には冬の嵐が渦巻いていた。

「急ぐぞ」

 私はリルリラ、ニャルベルトと頷きあった。
 地面には真新しい足跡がいくつもある。どうやら一番乗りではなさそうだ。
 ……それが問題だった。

 * * *

 足跡を追う。
 そのうちの一つは、途中で終わっていた。
 もう二度と、この足跡が地面に刻まれることはないだろう。
 倒れた男の白目を向いた顔と、胸に突き刺さった矢が、私にそれを告げていた。

「ニャッ」
「手当を!」

 ニャルベルトが短く鳴き、リルリラが即座に駆け寄る。だが彼女は男の体に触れ、沈痛な表情で首を振る。
 もはや彼女にできるのは、この海賊の目を安らかに閉じさせ、両手を組ませてやることだけだった。
 私は人相を確認した。壮年、海の男らしい荒々しい顔つき、立派な体格。頭に巻かれたバンダナは、血のような赤。

「海賊ハルバルドの最期、か」

 間違いなく、逮捕されたはずの海賊ハルバルドだった。
 そして胸に突き刺さった矢に、私は見覚えがあった。

「ゲーダム……」

 胸に渦巻く嵐は、吹雪へと変わっていた。

 * * *  ユナティ副団長からの密書は、ゲーダムの失踪を告げるものだった。
 副団長は語る。

『ヴェリナードに連行された海賊達の中に、船長のハルバルドの姿が無かった。どういうわけかと確認したところ、船長だけはゲーダムが自ら連行するので遅れるというのだ』

 不審に思った副団長はゲーダムの動向を詳しく調べさせ、彼がウェナ諸島を脱出し、オーグリード大陸へと向かったことを知った。
 訝る兵士らには本国からの特別指令だと説明したそうだが、無論、そんな指令は出ていない。

『その時、ゲーダムの様子がおかしいという、貴公の報告を思い出したのだ。まさかとは思ったが……』

 異常事態を察知した彼女は速やかに追跡部隊を派遣し、彼がこのギルザッド地方で消息を絶ったことを突き止めた。

『ゲーダムが何を企んでいるのか、まだわからん。だが奴が暴走しているのだとしたら、その時は……』

 私は即座に動いた。
 もし、ゲーダムの暴走が海賊への……マドロック海賊団への憎悪に端を発するものであれば、マドロックのいく先に必ず彼は現れる。すなわち、海神の秘宝だ。
 そう考えた時、彼がハルバルドを連れ出した理由にも見当がついた。

 ハルバルドは、一度は秘宝の地図を手にした男だ。部下たちには暗号が解読できないと語っていたそうだが……欲深い彼のことだ。独り占めを狙って部下にも真実を隠していたのだろう。
 地図の暗号が一度は暴かれていたというマドロックの証言も、この推測の裏付けとなる。
 ゲーダムもまたそれを見抜き、ハルバルドに取引を持ち掛けたのだ。秘宝の在り処に案内すれば逃がしてやると……。
 そしてこのアジトへとたどり着き、用済みとなったハルバルドはこの通り、というわけだ。

 リルリラが短く祈りを奉げた。あまり時間はかけられない。血の乾き具合からして、ゲーダムの居場所はそう遠くないはずだ。
 この先にゲーダムが、そしてマドロック海賊団がいる。
 彼らが出会った時、どういう事態が起こるのか……
 私は腰に下げた剣と、左腕に仕込んだ"切り札"に目をやった。

「使わずに済ませたいものだが……」

 もはやその望みは限りなく薄くなったように思われた。
 血だまりに水滴が一粒落ちる。帆柱の墓標が、ただの屍と化した海賊の遺体を冷たく見下ろしていた。
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