月日は百代の過客にして、行き交う年もまた旅人なり。
……とはカミハルムイの歌人バショオ氏の言葉だが……
私の目の前を今、ものすごい勢いで旅人が通り過ぎていく。
それはもう、ドルボードの比ではない。光陰矢の如し。目を離せば一瞬で手の届かないところへと消えていく。
ついこの間までクイーン選挙をやっていたかと思えばナイト選挙がいつの間にか終わり、新しい時代が到来し、エイプリルフールも過ぎ去った。早い。あまりに早すぎる。
私が思うに、これは恐らく……
「時空の歪み的なものが発生ているのではないかと……」
「お前が忙しかっただけだろ」
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ナイト総選挙2位のヒューザが即座にツッコミを入れた。おめでとう。2位おめでとう。ラグアス王子に大差をつけられての2位おめでとう。
「トゲがあるぞ。……っつーかお前、俺に投票してねーだろ!」
「失敬な。義理で1票だけ入れたぞ。残りはファラス殿だが」
因みにラグアス王子以外はほぼ横並びで、新顔の数名がやや低迷する結果になった。
クイーンコンテストも傾向は似たようなもので、リナーシェ様も最下位に終わっている。ウェディとしては残念な結果だ。
「いや、残念というより危惧すべき事態、と言うべきだな……」
「何がだよ」
「最下位になったウェディには前例があるだろう」
そう、このままでは……
「このままでは始原の歌姫が素麺をすする羽目に……!」
「罰ゲームじゃねえから!」
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まあ、次回に期待するとしよう。出場権があればだが。
「っつーかお前、話題が古りぃんだよ。クイーン選挙とか何か月前の話だ?」
「割と最近の話のつもりだったんだが……」
どうやら時間感覚にズレがあるようだ。
「やはり時空が」
「歪んでんのはお前のスケジュールだ!」
「魔法戦士団も! この時期は色々あるのだ!」
今週さえ乗り切れば、と言い続けてはや数か月。
気が付けばもう花見の季節も終わり、チェック柄のバイザーをつけた冒険者たちも風と共に去っていった。
桜は散り行き、時は過ぎ、伝令のドラキーマが無情にも終宴を告げる。諸行無常。ああ無情。
まあ、妖精の国の催し事には滑り込みで参加できたからいいのだが、それにしても……
「妖精の国は閉鎖されます、という終了アナウンスには妙な切なさを感じたぞ」
「……それは俺もちょっと思った」
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ドラキーマ氏には猛省を促したいところである。
「その話題も1か月ぐらい前だけどな!」
「……光陰、サンライトアローの如し」
ううむ、これはいかん。少しは最新の情報を仕入れねば。
そう、確かレンドア発で新しい催し事が開催されていたはずだ。
参加者の話を総合すると、どうやら……
「カミハルムイ南でピンクモーモン狩りが流行ってるらしい」
「………」
何やら懐かしい景色である。
「やはり時空の歪みが……」
「違う……と思うぞ、多分」
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かくして星霜の風はまた流れるのであった。