「ニャルベルト! この数か月を総括するぞ!」
「ニャんだ急に!」
とりあえずポーズをとってから猫が問い返した。
「イヤ、ここしばらく忙しくて日誌もつけてなかっただろう? 振り返りだけでもやっておこうと……」
「吾輩が付き合う意味は?」
「……一人だと寂しいだろう」
猫が長く鳴いた。ジュレットに吹く風は穏やか。
と、いうわけで、振り返りである!
_______
◆アストルティア・プリンスコンテスト
「けっこう古い話だニャ」
「締切前夜に慌てて投稿した写真だな」

~フェアリー・ナイト~
小さな姿 小さな出会い
それは 大冒険の始まりだった
「……ニャんか、前にも見た感じの写真だニャ」
「時間が無かったせいで去年のセットを使いまわしたからな……」
それでも一応スライドには載ったらしいので、目標達成ということにしておこう。
____
◆暗黒竜と光の剣

「万魔の塔、四の祭壇でカラミティドラゴンを討伐した時の写真だな」
「ニャんで光の剣?」
「ギガスラッシュのことだ」
かねてより問題視されていたギガスラッシュの火力不足に対し、我が魔法戦士団は長年討論を重ねてきた。
究極とも謳われた伝統の奥義が、何故こうも力負けするのか……
そして古代史研究の専門家ヒストリカ女史の力も借り、少なくとも古代エテーネ王国の時代には、もっと強力なギガスラッシュが使われていたことを突き止めたのである。
そこからは実技と研鑽。各国から剣の使い手を募り、文献をもとに再現を目指す。ガートラントのパラディン、グレンの戦士、グランゼドーラの魔剣士と、ラッカランのコロシアムに集うバトルマスターらがその中心となった。
魔術的な観点からオルフェアの占い師たちの知恵も借りる。遊び人も一応呼んだ。彼らの遊び心が最後の決め手に……なったかどうか、定かではない。
……で、私は改良されたギガスラッシュの実戦検証のため、酒場で雇った冒険者と共に万魔の塔に乗り込んだ、というわけだ。
魔法戦士の私に加え、片手剣装備の魔剣士が二人、蘇生回復はスティック装備の天地雷鳴士に一任する。
安定性に不安の残る構成だが、辛うじて全ての祭壇を完全制覇することができた。やはり魔法戦士がある程度殲滅に貢献できるようになったのは大きい。
「……ま、第三の祭壇は何度もやり直したが……」
何しろ時間が足りない。マダンテを出し惜しみしないことがポイントだろうか。
「だったら写真も三層の方にすればよかったのにニャ」
「撮ってる余裕が無くてな」
撮影のためもう一度カラミティデーモンのところまで行ける自信もない。
「代わりにバルディスタのロア先生と記念写真を撮ろうかと思ったが怒られそうなのでやめておいた」
「軍医やってるシャドーサタンの人だニャ……」
では、次である。
____
◆空賊のシャツと猫貴族のマント
「新装備、空賊のシャツだ。フォースブレイクとの相性の良さが嬉しい所だな」
「まあ相手の抵抗力とか考えたら気休めだけどニャ」
「で、せっかくなのでドレスアップもしてみた」

猫貴族のマントをベースにズボンとブーツは海賊、帽子は魔法戦士団。腕は大賢者。
それなりにまとまった雰囲気になったと思うが……
「なんだ猫よ。白けた顔をして」
「……だってパッと見、前と変わってニャいし……」
「まあ魔法戦士として、帽子と赤系統は外せんからな……」
だが! マイナーチェンジを繰り返して理想に近づくのもまた一興!
「ちなみに海賊のコート下はかなり良いセンを行ってるんだが、可能ならズボンを黒くしたかったところだな……」
「めんどくさいニャ……」
____
◆モンスターバトルロード
「お前ばっかり振り返ってズルいニャー! 吾輩も振り返るのニャ!」
「何かやってたのか?」
「これニャ!」

先日のモンスターバトルロード。ニャルベルトにとって久々の晴れ舞台だ。
「防衛軍では華麗に金縛りを使いこニャし、バラシュナでは遠くから撃ちまくる吾輩の雄姿! お前にも見せたかったニャー」
「写真はバトルレックスが天に召されたような絵面だが……」
「記念撮影ニャ。あ、このバトルレックスは一緒に戦ったナガネギさんだニャ。いい眠りっぷりだニャー」
……モンスターたちの文化はいまだ謎に包まれている。
____
「というわけでなんとか振り返れたな!」
「これで数か月の日誌サボりを埋め合わせたことにするわけだニャ!」
「誤魔化しでもとりあえずでも、前に進む力になればよいのだ!」
ようやく時間もとれるようになってきた。そろそろあの浮遊都市の調査も開始したいし、空賊のシャツは耐性がそろっていない。ゼルメアにも通わねば!
冒険は、まだまだ続くのである。