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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2022-12-23 01:11:31.0 テーマ:その他

魔法戦士と渦中の王たち(8)【注:ver6.1までのストーリー記述有】

 刺すような冷気が私の四肢を貫いた。紫紺の瘴気が障壁となって侵入者の前に立ちふさがる。
 嫌悪。拒絶。そして怒り。ここまで到達した冒険者たちが、思わず躊躇するほどの妖気がその空間を支配していた。
 ユーライザが前進を促す。
 英雄の手は、裂くようにそれを掻き分けた。
 暴かれた闇の中に、赤く輝く二つの球がある。ギロリ。双眸が英雄を睨みつける。
 そして彼女はそこにいた。  魔瘴の色に染まったドレスには、血で染めたような赤い模様がまだらに踊っていた。
 柔らかく垂れ下がっていた耳ヒレも刺々しく逆立ち、そして赤い瞳にはあざけりの笑みが浮かんでした。

「リナーシェ様!」

 オーディス王子が呼び掛けた。

「どうか正気にお戻りください。貴女はこのようなことをなさる方ではないはずです! 貴女は……」
「癒しの歌姫、理想の女王、完璧なる淑女、でしょう?」

 始祖は嘲笑を浮かべたまま青年を見下ろした。

「あなたはわたくしの何を知っているのかしら」

 ため息。肩をすくめる仕草が芝居がかって見えるのは、歌姫の本能か。

「必死で演じ続けて、得られたものはあなたのような男達の、誤解まみれの崇拝だけ」

 嘲笑がやがてひきつり、泣き笑いに変わる。

「残ったのは……あの汚らしい男が作り上げた王国だけ!」

 どす黒い瘴気が彼女のドレスを包み始めた。

「守れなかった! 国も……あの子も!」

 渦巻く気流と共に、悪神の思念が我々の精神に直接叩きつけられる。
 裏切りの王ヴィゴレーは、幼きアリア姫を女王リナーシェの身代わりとして娶り、歴史を築き上げた。ヴェリナード王国を……
「それは違います!」

 セーリア様が瘴気の風をかき分けて悪神の元へと駆け寄る。だが歌姫の狂乱は彼女の介入を許さなかった。
 無数の剣が突如として虚空から現れ、巫女姫の胸元へと一直線に迫る。英雄殿でさえ、咄嗟には反応できない速度だった。
 魔法戦士団が一斉に駆け寄るが、間に合わない。ユーライザが息をのむ。
 そしてセーリア様は……微動だにしなかった。
 乾いた金属音。
 飛来する刃を叩き落としたのは、オーディス王子の剣だった。

「リナーシェ様」

 彼は毅然と始祖を睨みつけ、荒い息を隠そうともせずに剣を構えた。 「たとえ王国の祖である貴女であろうと、セーリアを……僕の家族を傷つけることは、王家の男として許しません!」

 その姿はまだ粗削りながら、かつてラーディス王島の戦いにおいて、古代のカラクリからディオーレ様を守ったメルー公の雄姿を彷彿とさせるものだった。
 セーリア様が安堵の笑みを浮かべる。
 私も一瞬、頼もしさを覚えたのは確かだった。
 だが。

「くっ……ふふ……うふふふふ……」

 始祖の細い喉から、気のふれたような笑いが零れ落ちた。王子が怪訝な面持ちで視線を上げる。

「ヴェリナード王家の男は……家族を守る……?」

 狂気の笑みが魔瘴を赤く染める。風は雷鳴を伴い、嵐となった。
 英雄殿が頭を抱えるのが見えた。私も実を言えば、同じ気持ちだ。
 言うまでもなく、オーディス王子には何の落ち度もない。彼は大切な女性を危機から守り、その意思を堂々と宣言しただけだ。
 だが……この王子の"間の悪さ"は、天性のものだった。
 敢えて俗な表現をさせてもらおう。
 彼は地雷を踏んだのだ。それも、特大の。

「ヴィゴレーの! あの男の血を引く男が! よくもそんな戯言をぁぁぁ!!!」

 無数の剣が空を舞う。矢の雨を降らすように、刃が降り注いだ。
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